それにしても不思議なのは札幌だ。28節を終わって4勝5分19敗。勝ち点17は、ダントツの最下位だ。残り6試合。16位との勝ち点差は15。J2転落は決まったも同然の状態にある。シーズン当初からずっとこの状態を維持しているにもかかわらず、三浦監督のクビはいまだ繋がったまま。外国ではあり得ない話だ。

 さらに言えば、そんなクラブの状態に対して、地元メディアが激しく迫ったという話も聞かれない。これもまた外国ではあり得ない話。試合後の記者会見は、いったいどんな雰囲気の中で行なわれているのだろうか。チームスポンサーでもある北海道新聞は、この状態をどんな思いで見ているのか。批判は敢えて押し殺し、応援する立場で温かく見つようとしているのなら、その最下位は当然の結果と言える。

 ジュビロ磐田も不思議だ。Jリーグを代表する強豪。つい最近まで、5位は外しそうもない常勝チームの風格があった。シーズン途中で監督が交代し、バタバタした印象を抱かせた昨季にしても9位。少なくとも10位以下に落ち込んだら、その瞬間、騒動に発展してもおかしくない。メディアからもファンからも、監督交代! の声が湧き起こるのが世界の常識ながら、このチームは違った。静かだった。少なくとも、チームスポンサーの静岡新聞が、内山篤監督(当時)の批判記事を書いたという話は伝わってこなかった。

 9月の中旬になって、内山氏からオフトへ、監督交代はようやく実現したが、客観的に見て、かなり遅い。かつての強豪にはあるまじき、暢気すぎる対応だと言わざるを得ない。

 07年の実績で、79億円というJリーグでダントツの予算規模を持つ浦和レッズも、今季の成績は振るわない。現在13勝8分7敗。5位に甘んじている。今季のJリーグが、稀に見る混戦に見舞われた最大の原因と言ってもいい。開幕して2試合でオジェックを解任し、コーチのエンゲルスを昇格させ収拾を図ったが、エンゲルスのサッカーは誉められたものではない。

 79億円の年間予算に見合った成績を残しているわけでは全くない。外国なら「3人目」の話はとっくに出ているだろう。けんけんごうごうの議論が渦巻いているに違いない。

 不思議だ。ファンの多くは、現状に眉をしかめているはずだ。エンゲルスのサッカーに対し、ぶーぶー文句を言いながら、スタンドに足を運ぶファンの姿は容易に想像できる。埼玉のメディアの大人しさが、奇妙な空気に包まれる最大の原因だろう。

 北海道にしろ、静岡にしろ、埼玉にしろ、地方のメディアはなぜこうも静かなのか。この姿勢がもし当たり前だとすれば、Jリーグに発展は見込めない。僕にはハッキリそう見える。

 東京のメディアの中には、岡田ジャパンについて是か非かを問う記事は、それなりに多く見かける。新聞、テレビ以外の決して大きくないメディアが、数多く存在することと、それは大きな関係がある。あるサッカー雑誌が最近、行った調査によれば、約7割のファンが、岡田サッカーに不満や不安を感じているとの結果が出たそうだが、新聞やテレビといった大きなメディアは、そうした声に的確に答える報道をしていない。敢えて無視。当たらず障らずの姿勢を貫いている。

 つまり、一部を除く日本のメディアは、サッカーには向いていないという話になる。柏レイソルが、引き分けを挟む10試合勝ちなしを続けたら、監督交代の話は出て当然。7月末から6試合連続で勝利なしを続けたガンバ大阪の場合もしかり。実はJリーグには、突っ込みどころがいっぱいあるにも関わらず、中央の大メディアは、そこに迫れずにいる。地方のメディアも、騒動を好んでいるようには見えない、喜怒哀楽を極力抑えた報道に終始している。愛はあるのか! と、思わず叫びたくなる今日この頃だ。

杉山茂樹 / Shigeki SUGIYAMA
1959年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、サッカーを中心とするスポーツのフリーライターとして多数の雑誌に寄稿するほか、サッカー解説者としても活躍。1年の半分以上をヨーロッパなどの海外で過ごし、精力的に取材を続けている。著書には、『史上最大サッカーランキング』 (廣済堂刊)『4−2−3−1』(光文社)など多数。

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