江原批判をする大槻義彦さん

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   物理学者でオカルト批判でも知られる早大名誉教授の大槻義彦さん(71)が、公式ブログでテレビのスピリチュアル番組の「インチキ」を暴く論陣を張っている。特に、スピリチュアル・カウンセラーの江原啓之さん(43)への舌鋒は鋭い。江原スピリチュアル批判の著書を2008年3月に出版するという大槻さんに、何が問題なのか聞いた。

オーラの色は物理学の3原色理論を無視している

――大槻さんの言う「インチキ」とは、江原さんの場合どういうことですか?

大槻 例えば、テレビ朝日系のレギュラー番組「オーラの泉」に出てくる「あなたのオーラ」のコーナーです。江原さんは、「あなたの頭の上から放射状にオーラの光が出ている」とおっしゃいますが、科学的に言ってこれは見えません。懐中電灯を頭に乗せて上を照らしても、煙や浮遊するゴミでもない限り、光そのものが目に入らないからです。また、オーラの色が見えるといい、「あなたには、情熱的な赤と知性的な青が同時に見える」とおっしゃいます。しかし、これは物理学の3原色の理論を無視しています。赤と青が交じった光を同時に見ると別の色に見えるんです。もし、分離した色が見えるのなら、江原さんにはカラーテレビは見えないはずです。だから、3原色のオーラ占いはデタラメなんですよ。

――江原さんはカウンセリング相手を「事前調査」して、先祖霊のことなどをしゃべっている、と大槻さんはブログで指摘しておられますが。

大槻 昔、私が対決した霊能者の宜保愛子(故人)は、6人のスタッフで事前調査をしていました。でも、江原さんは、スタッフを使っていないようですよ。それは、インターネットがあるからです。彼の番組ではタレントばかりをゲストに呼んでいますが、それはタレントのデータならネットでいくらでも検索できるからです。私は、2年間「オーラの泉」を調べました。そうしたら、驚くべきことが分かりました。タレントの背後霊や守護霊を言うときの先祖の商売は、だいたい神主やお坊さんだったんです。当時は、ほとんどの人が農業や漁業の時代ですよ。これはまったくおかしい。

――週刊文春は、江原さんが事前に雑誌のインタビューを読んで、女優の壇れいさんについて「中身は男の子」と霊視した、と疑惑を指摘していますね。

大槻 同じような例があります。江原さんは2006年4月15日放送のTBSの番組「スピリチュアルジャーニー」で、ハワイ島を訪ねたときに、突然「あそこに武具をまとった王様が見える!」と宣託しました。地元の案内人は驚いたようですが、この地方は「王家の谷」と呼ばれています。だから、王ゆかりの場所に決まっているんですね。江原さんは、こうした情報をテレビ局提供、ネット検索で知るようです。
しかし、タレントでない一般の人については、そんなに詳しく調べられません。だから、フジテレビの「27時間テレビ」で秋田の美容院経営の女性を霊視したときは、カウンセリングを間違ったんですよ。リンゴを贈るボランティアにかまけて美容院の経営を疎かにしているということだったんですが、とんでもない。BPO(放送倫理・番組向上機構)の意見によると、この女性は、中越地震被災者といじめで悩む学校への2回しかリンゴを送っていないと話しています。なのに、それで美容院の経営がおかしくなりますか。

聞いていないことを霊視するのが霊視

――江原さんは、公式サイトでフジテレビに騙されたと不満を言っていました。

大槻 女性がカウンセリングを望んでいない、美容院の経営が順調である、とは聞かされていなかったと江原さんは主張されています。が、聞いていないことを霊視するのが霊視でしょう。それはつまり、何も霊視できなかったことに文句を言っているようなものですよ。テレビ局がこの女性のデータを教えてくれなかったから、なんていうのは語るに落ちます。自分は霊視能力がないと言っているに等しく、私はとても驚きました。「霊の世界と交信」というのは、東北地方で霊能を業としているイタコの口寄(くちよせ)のようなものです。江原さんは、イタコのやることと同じなので、私は「江原今様イタコ」というニックネームで呼んでいます。スピリチュアルというへんちくりんな英語でごまかしているだけです。

――ところで、オウム真理教事件でスピリチュアル番組を自粛したテレビ局が、反省なく再び自粛前に回帰しているように見えますが。

大槻 当時は、テレビ局は反省の声明を出したんですよ。その中で、一番素晴らしいことを述べたのは、(オーラの泉の)テレビ朝日。宜保を抱えていた日本テレビは、とても消極的でした。今は逆転して、当時のオカルトテレビ局は下火になっています。しかし、霊能者から見向きもされなかったテレ朝や(27時間テレビの)フジが、霊能番組で大もうけしています。彼らは、声明に反したことをやっているんですよ。

【大槻義彦さんプロフィール】
1936年、宮城県生まれ。東大大学院数物系研究科修士課程修了後の63年、同大理学部助手。73年から早大理工学部教授を務めた。放射線の「水切り運動」を発見。火の玉のメカニズムを世界に先駆けて究明した。日本物理学会理事などを歴任。テレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」など多数のテレビ番組に出演している。オカルト批判の著書に、「反オカルト講座」(ビレッジセンター刊)などがある。ブログ「大槻義彦のページ」(http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/)も運営している。

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