同じ発音の言葉をかけて遊ぶダジャレの代表的なものとして、「布団が吹っ飛んだ」が有名です。日テレ系列の大喜利テレビ番組「フットンダ」で面白い回答が出ると布団が吹っ飛ぶように、面白いダジャレに反応して布団を吹っ飛ばすマシン「オフトゥンフライングシステム」が開発されました。

おもしろいダジャレを入力すると布団が吹っ飛ぶ装置を作った - Qiita

https://qiita.com/fujit33/items/dbfbd7a2aa3858067b6c

ダジャレを愛する4人の開発チームは、データ分析企業の株式会社ブレインパッド内のダジャレを投稿して互いに褒め合うSlackチャンネル内で集まったとのこと。スレッドには「選ばれしエラーがバレた」「どう考えても同感」「虎視眈々とコシの強い担々麺を堪能する」など、渾身のダジャレが飛び交っています。



4人は「自分はこんなにもおもしろいダジャレを言っているのに、誰も笑ってくれない。。。むしろスベったみたいな空気になってる。。。」といった悲劇をなくすべく、最新ダジャレAIを搭載したダジャレ判定マシン「オフトゥンフライングシステム」を開発しました。なお、「オフトゥンフライングシステム」という名称は、ボーカロイド楽曲などを投稿しているあえる(@05Ael)さんが投稿した、その名も「【東北ずん子】オフトゥンフライングシステム 【オリジナルおふとん】」という楽曲から使わせてもらったとのこと。

【東北ずん子】オフトゥンフライングシステム 【オリジナルおふとん】

【東北ずん子】オフトゥンフライングシステム 【オリジナルおふとん】

オフトゥンフライングシステムは段ボール箱の上に畳がのせられ、その上に小型の布団が重ねられています。



システムの全体像はこんな感じ。ダジャレをフォームに入力すると、まずはダジャレ判別AI「Shareca」がその言葉が本当にダジャレかどうかを判定。「ダジャレである」と判定された場合はダジャレ評価AI「Ukeruka」がダジャレの面白さを評価し、ダジャレ評価が50点を超えた場合に「布団が吹っ飛ぶ」そうです。



たとえば「裏面のラーメン」というダジャレを入力すると、「ダジャレスコア」が53.98点と判定され……



布団が吹っ飛びました。



一方、「バラバラの薔薇」というダジャレを入力したところダジャレスコアが49.0点と判定され……



布団が吹っ飛びませんでした。



ダジャレではない「ダジャレが思いつきません」という言葉を入力すると……



やはり布団が吹っ飛びません。



自分のダジャレでみんなが笑ってくれない時、オフトゥンフライングシステムに判定を仰いで布団が吹っ飛べば「やはり自分のダジャレは面白かった」と自信を持てます。一方で布団が吹っ飛ばなかった場合も自虐ネタで笑いを取れるとのことで、まさに全方位に対応した万能システムとなっている模様。

オフトゥンフライングシステムは4つの技術から成り立っています。



開発チームによると、ダジャレには「完全反復型」「不完全反復型」「変形反復型」「潜在表現重複型」という4つのパターンがあるとのことですが、ダジャレ判定AI「Shareka」では2018年12月現在「完全反復型」「不完全反復型」に対応しているそうです。「変形反復型」「潜在表現重複型」の2パターンは音韻だけでなく言葉の意味や知識をAIに組み込む必要があり、難易度が格段にアップするとのこと。



Sharekaおよびダジャレ評価AI「Ukeruka」を訓練するために、開発チームはダジャレ専門サイト「だじゃれステーション」のダジャレデータと、「Character-level CNNでライトノベルっぽさを定量化する」という試みで用いられているラノベ・小説のタイトルをダジャレじゃないデータとして使用しました。

まず、Sharekaは入力文を全てカタカナに変換し、記号や長音、促音(ッ)を削除、小文字(ァ、ェ、ャ)などを大文字に変換します。そして一文中に2文字以上同じ並びが繰り返されている場合に「ダジャレである」と判定するとのこと。この方式によってダジャレの93%を正確に判定できるそうで、通常の文をダジャレじゃないと87%の精度で判定できるとしています。ルールを3文字以上にすれば通常文をダジャレじゃないと判定できる割合が格段に上昇しますが、「せっかくダジャレを入力したのに『ダジャレではない』と判別されてしまうのはあまりにも可哀想」とのことで、開発チームは2文字ルールを採用しています。

Ukerukaではだじゃれステーションに登録された評価点をもとにダジャレの面白さを学習させており、学習結果は以下のようになりました。右に行くほど多くのモデルを反復学習しているのに対し、オレンジ色の線は正解率、青色の線は学習量を示しています。上に行くほど正解率が上がるのですが、残念ながら67%付近から正解率が上昇することがなく、Ukerukaのダジャレ評価精度はそれほど高くないとのこと。研究チームは今回得た知見として、「ダジャレの評価には音韻だけでなく意味や知識が重要である」と述べています。



オフトゥンフライングシステムで布団を吹っ飛ばす機構には、独自に開発された次世代型布団ふっとばしエンジン「Kurohige」が採用されています。布団がのった段ボールの中に入っているのは、「超飛びジャンボ黒ひげ危機一発」のタルに棒が刺さった形状のマシン。ダジャレが面白いと認識された場合モーターが起動して、棒が飛び出る仕組みになっています。



もちろん布団も特別製。「ふっとぶとん“AI”rWeave」は従来のふとんよりも250倍吹っ飛ぶとのことで……



「板紙を多層構造で強靭にし、包装資材などに使用できるよう加工した板状の紙製品」を入れ込んで柔らかい寝心地を維持しつつ、裁縫力の高いデータサイエンティストが縫い上げたそうです。



面白いダジャレに反応して布団が吹っ飛ぶオフトゥンフライングシステムは、さまざまな技術の結晶である模様。「技術力のある人々が本気で面白いことに取り組むとここまでやれるのか」と驚かされる開発記となっていました。