地下鉄では各駅停車が一般的ですが、一部路線では快速や急行なども運転されています。しかし、なかには快速の運行を取りやめてしまった路線も。設備面の制約も大きい地下鉄において、通過駅のある速達列車の運行は、そうかんたんではないようです。

2年間だけ運行された「快速」、復活はある?

 札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、福岡の9都市にある地下鉄で、快速や急行など、通過駅のある無料の速達列車が運行される路線があります。東京メトロ東西線と副都心線、都営浅草線と新宿線、そして横浜市営地下鉄ブルーラインの5つです。このほか、東京メトロ千代田線と有楽町線では、有料の特急などが走っています。


神戸市営地下鉄西神・山手線の車両。かつてはこの路線でも快速が運行されていた(草町義和撮影)。

 かつてはもうひとつ、快速が運行されていた路線がありました。神戸市営地下鉄西神・山手線です。新神戸〜西神中央間16駅(22.7km)のうち、途中、三宮と新長田、名谷(みょうだに)の3駅のみ停車したもの。1993(平成5)年から、1995(平成7)年に阪神大震災で施設が大きな被害を受けるまで運行されていました。それ以後、復活していないことについて、神戸市交通局に話を聞きました。

――そもそもなぜ快速を運行したのでしょうか?

(いわゆるニュータウンである)西神地区のお客様の利便性向上を目的として運行しました。新神戸〜西神中央間で、所要時間を約6分短縮しています。

――なぜ復活しないのでしょうか?

 普通列車の待避線(追い越される列車が通過待ちするための施設)が、車両基地を併設している名谷駅にしかなく、快速による追い抜きができないことが挙げられます。当時の快速は、普通列車の運行間隔を拡げて走らせていたため、混雑する電車と空いている電車が生じるなど、列車により混雑率が大きくばらついてしまったのです。朝ラッシュ時などは列車の運行間隔を拡げるのが難しく、快速は日中のみ、30分間隔での運行に限られていました。

 加えて通過駅では等間隔の運行ができず、利便性を損なう結果にもなりましたので、阪神大震災から復旧するなかでダイヤを見直し、快速による速達性よりもダイヤの均質化を図り、普通列車の本数を増やしてきたという経緯があります。

――復活を望む声などはあるのでしょうか?

 確かに、お客様から復活をお望む声は寄せられています。それには新たに何か所か待避線を設ける必要があり、数百億円の費用が想定されます。このため、実際に復活を目指して施設改良を検討する動きには至っていないのが実情です。

最近導入した路線も じつは結構厳しい?

 先に挙げた無料の速達列車が走る5路線のうち、横浜市営地下鉄ブルーラインの快速は最も新しく、2015年7月から運行が始まったものです。平日は9時30分から16時まで、土休日は20時30分まで1時間あたり2本の運行で、普通列車と比べて横浜〜新横浜間の所要時間は11分が8分に、戸塚〜関内間は22分から17分に短縮されたといいます。地下鉄を運営する市交通局に話を聞きました。

――快速はどのような目的で運行を開始したのでしょうか?

 ブルーラインは1972(昭和47)年に5.2kmの区間で開業しましたが、そこから延伸するにつれ40.4kmという長い路線になりましたので、速達性の向上を求める声がお客様からも寄せられるようになりました。(ブルーラインが結ぶ)市の北部と南部、中心部とバランスある発展を促す観点や、競合路線からの新たなお客様の利用も見込んで、快速の運転を始めました。

――待避線の問題はないのでしょうか

 いえ、待避線は車両基地のある上永谷駅と新羽(にっぱ)駅のみで、両駅以外での追い抜きができない点は苦労したところです。お金をかけずに快速運行を実現することを考え、終端部(あざみ野〜新羽間および戸塚〜湘南台間)は各駅に停まり、おもに都心部で快速運転を行うという現在の形態になりました。

――ダイヤはどうなっているのでしょうか?

 日中1時間あたり上下8本ずつという従前の本数を維持しつつ、ダイヤの隙間を縫って快速を2本純増しています。前の列車に追い付いてしまうため、現状では増発が難しい状況です。


横浜市営地下鉄ブルーラインを走る「3000R形」こと3000形電車の3次車(画像:photolibrary)。

――利用者からの評判はいかがでしょうか?

「本数を増やしてほしい」「運行時間帯を延長してほしい」といったお声を多く頂いています。土休日の運行時間帯は16時から20時30分まで延長しましたが、現行の設備で行っているため、ラッシュ時の運行も今後の課題です。一方、快速が通過する駅を利用されるお客様からは、「この駅にも停車してほしい」あるいは「快速はいらない」といったお声もあります。

※ ※ ※

 現在快速や急行などが運転されている路線でも、そのような速達列車を運転できる条件は様々。線内で追い抜きも可能な東京メトロ東西線や副都心線では朝ラッシュ時間帯にも頻繁に運転されていますが、都営新宿線では、急行の運行は日中に限られています。都営浅草線ではエアポート快特が通過駅のある列車ですが、押上駅(浅草線の起点駅)以外で同列車の運行区間内に待避線がないことから、途中での追い抜きは行われていません。