装備的には快適だが大人の男性には狭い3列目

 今ではレクサスLXとNXの中間に位置づけられるのがRX。北米で1998年に初代がデビューして以来、世界的なスタイリッシュクロスオーバーSUVの火付け役ともなったこのモデルは、日本で初代、2代目がトヨタのハリアーと呼ばれていたダブルネームの持ち主でもある。 しかも、国内のイメージとは裏腹に!?  世界全体で見れば、RXはレクサスでもっとも売れているドル箱車種でもあるのだ。 そんなレクサスRXが、世界的潮流でもあるSUV+3列シートモデルを追加した。

 この3列シート仕様は、トップグレードのHVモデル限定でレクサスRX450h Lとして加わった。 とはいえ、ホイールベースは現行型では2790mmとそこそこ余裕があり、2列目シートモデルから伸ばされたわけではない。ではどうやって3列シートを実現させたかと言えば、3列目席は“ひそかに身長160cmまで対応”とした上で、ラゲッジの奥行きを確保するためリヤオーバーハングを延長したのだ。

 2列シートのRX450hとホイールベース2790mmは同じでも、全長は4890mmから5000mmへと、わずかとはいえ110mm伸ばされている。 実際に身長172cmの(シートの160cmという設定身長より長身)ボクが、2列目席ウォークインで乗車してみると、乗車するための幅方向の間口に不満はないものの、さすがに着座するとひざ回りスペースはゼロ。

 頭上方向には余裕があり座れないでもないが、ひざ頭が2列目席にあたった状態になる。 北米仕様には2列目キャプテンシートの用意があり、それなら2-3列目スルーで乗り込むこともできるかも知れず、内側の足を投げ出すこともできるため、着座感はグッと楽になるに違いない。日本仕様にも「要望が高ければ」導入されるかもしれない……。

 そんなことを待ってはいられないが、プレミアムクロスオーバーSUVの3列シートモデルを今すぐにでも買いたい……というなら、3列目席の居住性を高めるちょっとした技がある。つまり、2列目席4:2:4分割の中央部分を前に倒し、ひじ掛け代わりに使うことだ。そうすれば、少なくとも前方見通し性はよくなり、空間的解放感がちょっぴりながら高まる。 

 うれしいのは3列目席専用エアコンが装備されること。3列目席左側側面に温度、風量調整液晶コントローラーと吹き出し口、右側壁面にも吹き出し口があり、身長160cm以下の人なら、シアターフロア形状の着座位置もあって、まずまず快適に座っていられるはずである。

 もちろん、普段は3列目席を格納して、より奥行きがあるラゲッジルームとして活用するのが基本だろう。その場合でも、3列目席格納状態のフロアはフラットで、使いやすさは文句なしである。

 パワーユニットは3.5リッターV6エンジン+モーターを組み合わせ、エンジン出力は262馬力、355N・m、フロントモーター出力が167馬力、139N・m、リヤモータが68馬力、14.2N・mというスペック。

 2240kgの車重、電気式4WDで17.8km/Lというモード燃費は、さすがトヨタのHVだけのことはある。

 RX450h Lはモノグレードでタイヤは20インチの組み合わせのみ。発進はもちろんモーター走行。そこからエンジンが始動したときの加速感は、なるほど北米のユーザーが好みそうな、RX300の6速ATとは違う無段変速機の特性もあって、V8風のトルク感をともなったシームレスかつおおらかなテイストが支配する。

 乗り心地は20インチという大径タイヤを履いていても、車重が効いているのか、しっとり重厚なサルーンライクなタッチと言っていい。

 レクサスはミニバンを持っていない。これからも持つ気はないはずだ。そこで主に日本市場では最高級ミニバンのアルファード&ヴェルファイアに3列シートの使い勝手をまかせてきたわけだ。

 このRX450h Lの追加で、レクサスブランドに3列シートを望んでいたユーザーは「待望」と思えるかもしれないが、すでに報告したように、3列目席の居住性に過度な期待は禁物。乗降性を含め、両側スライドドアを備えたミニバンにかなうはずもない。

 3列目はあくまでエマージェンシーの2座と割り切って使う必要がある。 それでも電気式4WD、最低地上高の余裕による走破性、プレミアムクロスオーバーSUVならではの高級感はアルファード&ヴェルファイアには望めないところ。存在意義はもちろんあると断言できる。

 それが(ミニバンに変わるクルマとして)世界的な要望でもあるからだ。 なにより、かつてアルファード&ヴェルファイアを所有していたようなリッチな夫婦が、息子、娘夫婦とその子供2人を乗せ、最先端の先進安全運転支援機能=レクサスセーフティシステム+に支えられた安全快適なクルーズで、たとえば逗子マリーナに向かい、クルーザーやヨットを出す……そんな使い方に高級SUVはうってつけであり、むしろハマる。

 ちなみに欧米のセレブも、普段はレクサスLSのような高級サルーンに乗っていても、船を出すときにはハイエンドなSUV……そんなライフスタイルだったりするのである。