ある意味で出口戦略を示唆するものなのか、という議論もありましたが、12月22日の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁は「金融緩和の方針に変化はない」ことを強調しました。黒田総裁の任期も4月に迎えますが、現状では再任される可能性が濃厚です。

 いずれにしても、日銀は引き続きイールドカーブ調整、マイナス金利、国債買い入れ、ETF買入れといった量的、質的量的緩和を続けて行くことになると思われます。とはいえ、国債の買入れやETFの購入といった量的金融緩和政策では、限界が近いとも言われています。

 ―-ユーロ圏もブレグジットなど、イベントが続きますが2018年はどうなりますか?

 ECB(欧州中央銀行)は、現在の月額600億ユーロの規模で実施して来た国債などの買入れを、2018年1月から9月までの間、300億ユーロに減額するダウンサイジングを実施すると宣言しています。いよいよ量的緩和の終了かと思われたのですが、9月で量的緩和が終了するわけではなく、その規模も状況によっては増やす、という意向を示しており、市場はやや混乱している状態です。

 量的緩和の終了が一体いつになるのかが注目されるところですが、ドイツ連銀総裁などからも「いつ量的緩和が終了になるのか。はっきりさせるべきではないか」といった声も上がっています。とはいえ、ECBが12月14日に発表した2020年のインフレ見通しでは1.7%となり、目指すインフレ目標率2%を達成するには至っていません。そういう意味では、2018年はECBが依然として量的緩和を継続していく可能性が高まったと言えます。

 一方の英国ですが、2018年には具体的なブレグジットが始まりますが、国内でのインフレ率が高まっており、金利のさらなる引き上げによって英国ポンドは高値を追う可能性があるかもしれません。

 ――2018年の予想レンジを教えてください。

 米国の景気動向がどう動くかで、米国の長期金利が大きく動きます。為替市場というのは、企業業績などで動く株式市場などと違って、金利によって大きく動き、影響を受けます。そういう意味では、米国が2018年には2回、もしくは3回の金利引上げが予想されており、原則として「ドル高」の傾向が大きな基調になると考えられます。具体的には、次のような予想レンジを考えています。

●ドル円……1ドル=105円-120円
●ユーロ円……1ユーロ=125円-145円
●ユーロドル……1ユーロ=1.13ドル-1.23ドル
●ポンド円……1ポンド=140円-160円

 ――豪ドルのトレンドはどう見ればいいでしょうか?

 2018年のオーストラリア経済は、2017年が資源価格の回復や中国経済が堅調だったことから、順調に推移しており、中央銀行に当たるオーストラリア準備銀行(RBA)の利上げがいつになるのかがポイントだと思います。

 すでに住宅価格は上げ止まっており、春先になるのか、あるいはもっと先になるのかは、今後の豪経済次第と言えます。1年間の予想レンジとしては、1豪ドル=82円-92円と見ています。

 ――最後に、2018年のFX投資の注意点を教えてください。

 最近は、株式市場と為替市場が連動しないなど以前とは異なる傾向がみられます。この背景には「為替は金利で動くもの」という基本に基づいているものです。そういう意味では、米国の金利が上がればストレートにドル高となり、他の通貨も金利が上がればその通貨は高くなります。日本の金利は当面上がりそうもありませんが、かといって円安一辺倒にならないところがFX投資の難しいところでもあります。

 そういう意味では、2018年も為替市場の読みは難しい1年になるかもしれません。変動幅の大きな相場に注意しながら、余裕のあるポジションで投資を楽しむ余裕が欲しいところです。(文責:モーニングスター)。