7月初旬。居ても立ってもいられず、関西国際空港から韓国・仁川国際空港行きのピーチ便に飛び乗った。日本流のおもてなしが期待できるリゾートとして、4月20日に華々しくオープンしたはずの『パラダイスシティ』。しかし、ことカジノに関し、現地を訪れた友人、知人の評判が思ったほど芳しくなかったからだ。
 「ホテルはともかく、カジノゾーンは機械を締めているところが多い。不安定な世界情勢の影響もあるが、見切り発車だったのではないか」
 「あまり知られていないのか、静かすぎて博打場じゃないみたい。今後? 厳しいんじゃないですかね」
 負けた腹いせか、皮肉からか、業界関係者や知人からもこんな声を耳にしていた。こうなりゃ、ホンマかどうか行って確かめるしかない。

 そのパラダイスシティは日本のエンターテインメント企業『セガサミーHD』が韓国でカジノ運営50年の歴史を持つ『パラダイスグループ』とともに共同出資。総工費約1300億円をかけた北東アジア初の統合型リゾート(IR)だ。
 場所はソウル郊外の仁川空港近く。約33万平方メートルの敷地内に、外国人専用カジノ、711室のラグジュアリーホテルに、1820人を収容できるコンベンションホールを備えている。さらに、商業施設とデザイナーズホテル、スパが2018年秋に完成する。近い将来の日本のカジノ解禁に備え、セガサミーが社運を賭けた一大プロジェクトだ。

 仁川空港3番出口からシャトルバスに乗ること5分弱というアクセスのよさ。つまり、関空からだと2時間半ほど、東京からでも3時間ちょいで非日常的な空間に入り込めるわけだ。
 館内はまさに超ラグジュアリー。想像以上の豪華さに圧倒される。地上10階、地下2階の建物はゴールド、レッド、パープルウイングの3方向に分かれ、米国ラスベガスのミラージュホテルのような構造だ。

 また、ここパラダイスシティは「アート」と「エンターテインメント」を融合させた「アートテインメント」をコンセプトにしており、館内のいたるところに大小2700を超えるアート作品が展示されている。
 「まるで世界の美術館のようですよ」と現地スタッフの赤間理恵さん。
 特に目を引くのがエントランスにそびえる翼を広げた黄金のペガサス「ゴールデンレジェンド」、さらに吹き抜けの中央部分には、あの草間彌生作の巨大な黄色い「パンプキン」がドーンと鎮座している。

 付け加えておくと、富裕層向けには630平方メートル、1泊200万円というプールヴィラ(8月中旬オープン予定)があり、大人のパーティーを楽しむもよし。高いもので1本150万円相当もする高級ウイスキー『ロイヤルサルート』専門のラウンジで生演奏を聴きながらゆったりくつろぐのも悪くない。
 そうかと思えば、屋内外の大小のプール、ボウリング場、プールバー、さらにセガのゲームも遊べる「ソニープレイステーションゾーン」があり、夏休みの家族旅行にもよさそうだ。

 さあ、いよいよ気になるカジノゾーンへ。パラダイスセガサミー日本市場企画運営室常務・青山茂樹さん直々の案内で、馬でも象でも通れそうなゴージャスな赤い門をくぐり、受付でパスポートを提示。この頃には前評判のことはすっかり忘れ、胸が高鳴る。
 荷物を預け、ワクワクしながら一般フロアに入ると、そこはちょうど昨冬に訪れたマカオの『ザ・パリジャン』を思わせる華やかさ。やっぱり、カジノと畳は新しいのにかぎる。しかも、台と台の間隔が広く、天井が高いから圧迫感もない。カーテン越しに自然の光が差し込んでいる点も、淫靡で魔宮に迷い込んだようなカジノとは一線を画す。

 ゲーム機はスロットが281台。ルーレット、バカラ、ブラックジャック、ポーカーなどテーブルゲームも154台ある。これに飲食スペースを加えた面積は韓国最大級の1万5500平方メートルと聞けば納得。賭け金は種類によって異なるが、ルーレットは日本円で250円からと財布にも優しい。