切迫する北朝鮮ミサイルの危機…日本が全弾迎撃できる可能性は何%か?
強硬な米トランプ政権に追いつめられた北朝鮮の3代目指導者・金正恩は、すでに日本へ向けたミサイルの発射スイッチを握っているかもしれない。
忘れてはいけないのが、これは「国家の危機」という曖昧なものではなく、個人個人の命の危機だということ。知るべきを知り、生き延びるには?
■5発を全弾迎撃できる可能性は約85%
「アメリカが我々に少しでも手を出したなら、すぐに全面戦争に発展する。朝鮮半島有事の際は、日本に最も大きな被害が及ぶだろう」
4月18日、北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)・日朝国交正常化交渉担当大使は記者団にこう述べた。「被害」とは、もちろん日本に向けられた200発以上の弾道ミサイルのことだ。
核実験を実行すれば、ためらわず軍事攻撃を行なうと明言する米トランプ政権。それに反発し、核実験の準備を進める北朝鮮―。もはや、極限まで追いつめられた金正恩がいつ本当にミサイルを撃ってもおかしくない……いう危機的状況だ。
これまで多くの日本人は、「なんだかんだいって、結局は撃たないんでしょ?」と高をくくっていたと思う。だが、事ここに至っては、ミサイルという“今そこにある危機”の正体を知り、そこから生き延びる方法を真剣に考えておかねばならないだろう。
まずは、日米のミサイル防衛体制に関する基礎知識から。発射の予兆を事前にとらえることは可能か?
ーー結論から言えば、運がよくなければ無理だ。
現在、北朝鮮を24時間監視しているのはアメリカの早期警戒衛星だが、これはミサイル発射の瞬間に出される大量の赤外線を探知し、「今撃った!」と第一報を伝えるのが任務。一方、低軌道を回る偵察衛星もあるが、これは一日に数回、北朝鮮上空を通過するときにしか画像情報を得られない。航空評論家の嶋田久典氏が解説する。
「固体燃料のミサイルは発射準備時間が非常に短いですし、地下発射施設や移動式発射台の動きをつかむのも困難。ヒューミント(人間のスパイ)やステルス機による常時監視がなければ、発射の予兆をとらえるのは難しいでしょう」
●着弾する前にミサイルを迎撃できる確率は?
ーー日本の迎撃網は2段階。ひとつ目が日本海に前線展開するイージス艦(現在は日米合わせて8隻から10隻)のSM−3ミサイル、ふたつ目が自衛隊や米軍の基地などに配備される地上配備型のPAC−3ミサイルだ。
SM−3は、250kmまでの高度にいる一目標(ミサイル1発)に対して2発発射され、その命中率は96.76%。仮に北朝鮮が5発同時にミサイルを発射し、それぞれにイージス艦一隻ずつ対応したとすると、1発も撃ち漏らさず迎撃できる確率は単純計算で約85%(96.76%=0.9676の5乗)となる。
そして、その後ろに控えるPAC−3の命中率は86%。ただし、射程は15kmから20kmと決して広くない。
「確率論以前に物量の問題もあります。イージス艦一隻に積まれているSM−3ミサイルは9発にすぎず、PAC−3も一拠点に何十発も撃ち込まれる事態は想定していない。日本に向けられた200基以上のミサイルすべてに対処できるかというと、正直言って限界があります」(嶋田氏)
◆本日発売の『週刊プレイボーイ』19・20合併号「北朝鮮ミサイルからなんとしても生き延びる方法」では、さらに具体的にシミュレーション。そちらもお読みください。
(取材・文/世良光弘)