奨学金を滞納したらどうなる?

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子供の大学進学にあたり、奨学金制度を利用する家庭が増えている。JASSO(日本学生支援機構)の2015年度の貸与実績によると、同機構の奨学金を利用している大学生は全体の38.2%。2004年(23.5%)の約1.6倍に増えた。

世帯収入の伸び悩みや授業料の値上がりなどを背景に、奨学金の利用が一般化したといえるが、そこには注意すべき落とし穴もある。「奨学金」という呼び名のせいでつい忘れがちだが、最も利用者の多いJASSOの貸与型奨学金は、無利子の第一種、有利子の第二種のいずれもが、返済義務のある「借金」にほかならないということだ。

JASSOの貸与型奨学金が、国や民間の「教育ローン」と異なるのは、借り入れと返済を行う主体が親でなく奨学生本人であることと、金利が安いことぐらい。最大月額12万円(医歯薬獣医系を除く第二種奨学金の場合)も支給を受けられるからといって、たくさん借りれば卒業後の返済はそれだけきつくなる。親の世代が大学に進学した当時より貸与限度額は上がっている一方で、教員など一部の公務員になれば返済が免除された制度は、現在では廃止。15年度の延滞率(3カ月以上)は4.2%と、決して少なくはない。

万一返済が滞った場合には、それなりのペナルティが待っている。滞納分については年利5%もの利子(貸与された時期などにより異なる)が課されるうえ、奨学生本人の信用情報に「傷」がつくリスクもある。JASSOでは数年前から、他の一般的なローンなどと同様に、奨学金の申請時に同意書を取ったうえで、3カ月以上の滞納者については個人信用情報機関に延滞情報を登録する措置を取っている(いわゆる「ブラックリスト」入り)。そうなれば、登録後5年間は住宅ローンやクレジットカードの新規申し込み、携帯電話などの分割払いの審査が通らなくなってしまう。手持ちのクレジットカードの更新も場合によってはできなくなるなど、日常生活に大きな不便が出る。

同級生もみんな利用しているからと、安易な気持ちで奨学金を借り入れるのは危険だ。申し込みの前に、本人も交えた家族全員で、授業料や仕送りなど進学費用の全体像を確認。親が出せるお金と合わせ、どのくらい貸与を受ければ必要な出費がまかなえ、かつ卒業後の返済も無理なくできるかを、具体的に話し合おう。月々の貸与金額や在学期間を入力すれば、卒業後の返済月額を概算できる、JASSOのウェブサイトのシミュレーションページも活用したい。

延滞者は、書類の作成を親まかせにするなど、申請手続きに主体的にかかわっていなかった場合が多いというデータもある。「もらえるお金」ではなく「借りて返すお金」なのだという実感をわが子に持たせるとともに、不注意も含めた延滞を絶対に避けるよう言い聞かせよう。

最近は親が子供の奨学金を肩代わり返済するケースも多いようだが、その場合も親の事情や手違いで返済を滞らせないよう注意したい。延滞したのが親でも、信用情報に傷がつくのはわが子だ。

一方で、奨学金を肩代わりした結果、親たちの老後資金の積み立てができていない事例も、家計相談を受けるなかでしばしば見かける。「学費ぐらいは出してやりたい」という親心は理解できるが、老後資金が不足すれば、結局は将来わが子に迷惑をかけることも意識してほしい。

(ファイナンシャルプランナー 深田晶恵 構成=川口昌人)