金正恩氏

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米国の有力な人権団体・北朝鮮自由連合の「北朝鮮女性実務グループ」が、2018年を北朝鮮女性の人権問題で画期をなす年とすることを目指し、運動を繰り広げている。

昨年4月に編成された実務グループは同年夏、国連経済社会理事会傘下の女性の地位委員会に対し、同委員会の2018年会期の主題を北朝鮮の女性問題とするよう求める声明を提出した。またそれに添えて、北朝鮮における女性の人権蹂躙に関する複数の資料も提出している。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、実務グループが提出した資料は、軍隊内で横行する性的暴力に関するものをはじめ、この北朝鮮の女性問題を多角的に検討できるものであるという。

また、すでに本欄でも触れているが、実務グループは中国における脱北女性の人身売買被害をとくに問題視している。

脱北者は逃避行の途上であるという特性上、司法機関などに被害を訴え出ることができず犯罪に対して無防備な状態に陥りやすい。人身売買などの被害に遭っても、誰にも助けを求められないということだ。

それどころか中国当局は、金正恩体制に協力して脱北者を摘発し、北朝鮮へ強制送還している。中国と北朝鮮両国の当局は最近、緊密な協議を行い、脱北者を積極的に摘発、強制送還することについて合意に至ったとされる。詳しい合意内容は不明だが、最近に入り大々的な脱北者摘発作戦が行われ、中国側の町中には「通報した者には報奨金を支払う」との横断幕やプラカードが掲げられている。

強制送還された脱北者は、国外逃亡者専用の拘禁施設で拷問などの虐待を受ける。とりわけ、性暴行や強制堕胎など、女性虐待が日常化している実態は、元収容者や関係者の告発により明らかになっている。

(参考記事:刑務所の幹部に強姦され、中絶手術を受けさせられた北朝鮮女性の証言

中国当局は間接的にとは言え、北朝鮮における人権侵害を助長しているわけだ。

国連ではいま、北朝鮮の人権侵害の責任を追及し、人権状況の改善を求める決議案が討議されている。抜本的な改善のためには金正恩体制の変更が必要だろうが、仮にそれが可能だとしても膨大な時間がかかる。

しかし、中国当局に態度を改めさせることは、それよりもいくらかは容易だろう。北朝鮮の人々が今を生き抜くことができるように、「逃げ場」を確保しておくことも重要だと筆者は考える。