ソフトバンクのバンデンハーク

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◆ 不敗神話が止まらない

 4月26日、京セラドーム大阪で行われたオリックス戦。ソフトバンクは先発のリック・バンデンハークが初回に2ランを浴びながら、その後はペースを掴んで6回2失点と好投。打線の援護もあって試合をひっくり返し、結局9-3で勝利を収めた。

 これでバンデンハークは開幕から無傷の4連勝。昨年の日本デビュー戦・6月14日の広島戦からはじまった連勝記録は「13」に伸びた。

 「デビューからの13連勝」は、1966年の堀内恒夫(巨人)以来で史上2人目。“デビュー”を除いても、「13連勝」は1987年から88年にかけて郭泰源(西武)が記録した、助っ人外国人投手のプロ野球記録に並ぶ快挙だ。

 昨年は外国人枠の関係もあって、序盤はなかなか出番が回ってこなかった苦労人。それでも腐らずに準備を続け、ついにプロ野球記録と肩を並べるところまで来た。記録更新へ向け、次回登板への期待も高まっている。

◆ 安定感がスゴい!

 バンデンハークのスゴさを考えた時、真っ先に上がるのが「投球の安定感」だろう。来日してからここまでの全登板の投球内容をまとめたものが以下になる。

バンデンハークの全登板】

● 2015年

6月14日 vs.広 [勝] 6回2失点(自責1)

6月21日 vs.日 [勝] 7回2失点

7月 2日 vs.西 [-] 8回3失点

7月 9日 vs.楽 [勝] 6回無失点

7月15日 vs.日 [-] 5回3失点

7月24日 vs.オ [勝] 7回1失点

7月31日 vs.西 [勝] 6回2失点

8月 7日 vs.ロ [-] 3回3失点

8月14日 vs.西 [勝] 6回2失点

8月26日 vs.ロ [勝] 8回無失点

9月 2日 vs.西 [-] 5回3失点

9月 9日 vs.日 [勝] 6回1失点

9月16日 vs.オ [勝] 8回無失点

9月23日 vs.日 [-] 6回2失点

――

15試 9勝0敗 防2.52

QS:12回 QS率:80%(12/15)

● 2016年

3月26日 vs.楽 [-] 8回3失点

4月 2日 vs.日 [勝] 7回1失点

4月 9日 vs.オ [勝] 7回1失点(自責0)

4月19日 vs.ロ [勝] 7回1失点

4月26日 vs.オ [勝] 6回2失点

――

5試 4勝0敗 防1.80

QS:5回 QS率:100%(5/5)

☆通算

20試 13勝0敗 防2.32

QS:17回 QS率:85%(17/20)

 QSとは、『クオリティ・スタート』のこと。「6回以上を投げて自責点が3以下」であれば記録されるもので、先発投手を評価する指標として、近年日本でも浸透してきたデータのひとつである。

 バンデンハークの場合はこれが驚異的で、来日以来20試合に先発し、達成できなかったのはわずかに3試合だけ。今シーズンに至っては全試合で「6回・自責点3以下」をクリアしているのだ。

 しかも、20試合に登板し、これまでに1試合で喫した最大の失点は「3」。頭部死球による危険球退場があった昨年8月7日のロッテ戦を除けば、最短降板も5回となっており、マウンドに登れば悪くても「5回3失点」でまとめてくれる。これほど計算が立つ投手がこれまでにいただろうか。

 この抜群の安定感こそ、勝利を重ねることが出来る最大の要因といえる。

◆ 援護運がスゴい!

 投手が一人で頑張っていても、味方が点を取ってくれなければ白星はつかない。しかしこの男、味方の援護を呼び込むパワーも持っている。

 今シーズンは5試合で喫した失点が8なのに対し、もらった援護は29点。登板中に味方打線が挙げた得点を、1試合相当(9イニング当たり)で表した「援護率」は6.69。リーグではロッテの涌井秀章(7.05)に次ぐ数値を叩き出している。

 また、「援護率」には反映されない降板後の得点で黒星が消えた試合もあった。

 例えば、昨年7月2日の西武戦。8回3失点で降板となり、ゲームは1-3とソフトバンクが2点ビハインドで9回裏へ。ここで追い詰められた打線が奮起。西武のストッパー・高橋朋から吉村のタイムリーで1点を返すと、明石の内野ゴロが野選を誘発して同点。バンデンハークの負けが消えると、最後は内川の犠飛で逆転サヨナラ勝ちを収めた。

 もちろんソフトバンクの打線が強力であることに疑いの余地はないが、援護がもたらされるのもしっかりと試合を作っているからこそ。野手側の「バンディなら抑えてくれる」と、本人の「ガマンして投げれば点を取ってくれる」という絶妙な信頼関係も、連勝記録を伸ばす、そして連勝記録が止まらない要因のひとつであると言えそうだ。

◆ 鉄壁のリリーフ陣がスゴい!

 白星は一人で掴めるものではない。打線の援護とともに重要になってくるのが、バトンを受け継ぐリリーフ陣の存在である。

 バンデンハークの場合は特にそれが不可欠。なぜなら、全登板記録を見てもお分かりの通り、完投が1度もないためだ。

 どれだけ素晴らしい投球を見せていても、9回3つ目のアウトを取るまで白星の行方は分からない。試合を締めてくれる仲間たちのはたらきがなければ、勝利がつくこともない。

 しかし、この2年間・20試合の登板を見てみると、勝利投手の権利を持ってマウンドを降りながら、その後味方に勝ちを消されたという試合は、9月2日の西武戦のみ。たった1試合だけなのだ。

 「デビュー13連勝」という記録で讃えられるのは、本人と打った選手だけではない。後を受け継ぎ、しっかり勝利へ導いた強力リリーフ陣の活躍なくしてなかったのだ。

 完全無欠の助っ人右腕は、どこまでこの記録を伸ばしていくことができるか……。日本新記録がかかる次回登板は見逃せない。