太田基裕が抱く、役者としての矜持「自己満足で終わりたくない」
2.5次元ミュージカルや舞台を中心に数多くの作品に出演し、演技だけでなく歌唱力にも定評がある、 まさにオールマイティな俳優、太田基裕。演じる役によって違う表情を見せ、目にするたびに印象を変え、私たちに新鮮な驚きを与えてくれる。どうして彼は、こんなにも観客を魅了し、そして愛されているのか…その答えは、彼のまっすぐな眼差しのなかにあるはずだ。

撮影/松村みほ(Rooster) 取材・文/花村扶美 ヘア&メーク/大坪真人

韓流ドラマがキッカケで芸能界へ



――俳優を目指すようになったキッカケは何だったんでしょう?

最初のキッカケは、妹の「お兄ちゃん、オーディション受けてみたら?」という一言でした。もともと音楽は好きで、芸能界に憧れはあったけど、自信がなかったんですよね。

――興味はあったんですか?

母親がハマっていた韓国ドラマや韓国映画のDVDを借りて見ているうちに、役者という仕事って素敵だなぁって思うようになりました。

――初めて興味を持った作品を覚えていますか?

『シュリ』という映画を見たのが初めてだったんですけど、内容もロマンチックだったし、役者さんの表情が素晴らしかったんですね。それがキッカケでドラマを見るようになって、『雪の女王』という作品にハマりました。

――どこに惹かれたんですか?

主人公を演じたヒョンビンという役者さんの、目の演技に引き込まれてしまって。切ない目がすごく訴えかけてくるんですよ。自分もこういうふうに、誰かに感動を与えてみたいと思いましたね。

――趣味は韓国語ということですが、それで勉強したんですね?

そうです! 新大久保にある語学学校に1年間通いました。

――行動的なんですね!

当時は“冬ソナブーム”で韓国語を習う人はたくさんいたけど、僕と同年代の若者はいなかったんです。クラスメートはみんなおばさまでした(笑)。だからみなさんに可愛がっていただいて、一緒にランチへ行ったりしたのも楽しかったですね。



初舞台で観客との一体感に感動



――舞台の魅力はどんなところにあると思いますか?

僕はミュージカル『テニスの王子様』が初舞台だったんですけど、お客さんとの距離の近さというか、一体感にすごく感動して。

――舞台は、日によってお客さんの反応も違いますよね。

そうなんです。僕たちのお芝居も変わりますし、毎回同じ公演はないところが舞台の魅力だと思います。

――では「役者になってよかった」と思うのは、どういう瞬間ですか?

…難しい質問だなぁ(笑)。でも、ひとりでも多くの方が楽しんでくださったらうれしいです。Twitterとかで感想を書いてくれているのを読むと、やっていてよかったなって思いますね。

――励みになりますよね。

ただし、100人中100人の方が素晴らしかったと言ってくださるわけではないので。自己満足で終わりたくないという思いもあります。

――なるほど。では逆に、役者をやっていて辛いと思うときはありますか?

辛い、というのとは違うかもしれないですけど、役の切り替えがうまくできなくて、役に馴染むまでに時間がかかっちゃうんです。だから、その役をどう演じたらいいか悩んでいるときかなぁ…大変なのは。

――その苦しみをどうやって乗り越えるんですか?

同じ現場に信頼している共演者がいたら、自分はどう見えているか聞きます。やっぱり、客観的に見てくれている人の意見は参考になりますね。