ダム建設で失われた川を甦らせる「雪原のアートプロジェクト」 #WXD

写真拡大

ダム建設によって姿を消した川が、環境問題とアートを結びつけたプロジェクト「We Are The Water」によって"再現"された。アーティストのソーニャ・ヘンリクセンが思いついたのは、雪に足跡で川を描くというアイデアだった。本誌VOL.15(3/10発売)の総力特集「ワイアード・バイ・デザイン(WXD)」より転載。

SLIDE SHOW FULL SCREEN FULL SCREEN 「ダム建設で失われた川を甦らせる「雪原のアートプロジェクト」 #WXD」の写真・リンク付きの記事はこちら
We-Are-the-Water-03

2/2翌日に、上空から撮影した写真。

Prev Next PAUSE EXIT FULL SCREEN We-Are-the-Water-01

参加者たちは4時間かけて、凍った池に積もる雪に足跡をつけていった。

We-Are-the-Water-03

翌日に、上空から撮影した写真。

米コロラド州スティームボートスプリングス近くに位置するラウト郡には、ヤンパとよばれる川が流れている。以前は谷間を流れていたが、ダムが建設されたことで地形が変わってしまい、川があった場所には貯水池がつくられた。ドイツ出身のアーティスト、ソーニャ・ヘンリクセンはこの川を“再現”した。

「アメリカ西部は、地球温暖化の影響でたくさんの水問題を抱えています。10年以上にわたって水不足や干ばつに悩まされ、冬になっても山では十分な雨も雪も降りません。コロラド川は、コロラドのデンヴァーからラスヴェガスやロサンジェルス、砂漠地帯のアリゾナ州フェニックスまで、大都市を含む広い地域に水を供給しています。ヤンパ川はコロラド川の支流でした」

コロラド北部のヤンパ川周辺の水問題についてのセミナーを開こうと考えていたある人物から、ヘンリクセンは相談を受けた。これをきっかけに始まったのが、雪に足跡で川を描くプロジェクト「We Are The Water」だ。

Sonja Hinrichsen | ソーニャ・ヘンリクセン
アーティスト。都市や自然環境をテーマにリサーチを行い、作品を発表している。近年「We Are The Water」のようなスノードロウィングのプロジェクトを世界各地で行っている。2014年2月には、フランスのブリアンソンでも行った。www.sonja-hinrichsen.com

「水滴になりきって。水のように流れるように動くのよ」とヘンリクセンは、参加者たちに指示を出した。

2014年2月、3日間のセミナーが実施された。参加者たちは2日かけて、川をとりまく環境や、水がいかにわたしたちの生活やコミュニティを支えているかを学んだ。2日目の夜、ヘンリクセンは、水の動きを分析するワークショップを行った。

「水は、ものすごいスピードで移動することもあれば、ゆっくりとせせらぎのように流れることもある。直線をひたすら行くこともあれば、岩や障害物にぶつかりながらエネルギーを取り込んだ生き物のように進んでいくこともあるでしょう? 激しいジャンプもすれば、プールや池に静かにたまっていることもある。さまざまな表情をもった水を、どうやって雪靴の足跡で表現できるかをみんなで考えたのです」

そして迎えた3日目。参加者たちはヘンリクセンとともに、凍結し、雪が積もった貯水池に集合した。前日の夜に考えた動きをもとに、各10〜15人に分かれた4チームの参加者たちは、それぞれダムが建設される前に存在したヤンパ川の4つの支流になりきり、4時間かけて、凍った池に積もる雪に足跡をつけていった。そしてダムがつくられる前の状態の川を描いていったのだ。

「わたしは『水滴になりきって。水のように流れるように動くのよ』と指示しただけです。途中で、歩いている参加者同士の間隔が近すぎると思ったこともありました。でも翌日に、上空から撮影したものを見たら、それは杞憂だったとわかりました。なぜなら彼らが描いたヤンパ川は完璧だったのです」

ヘンリクセンは、このプロジェクトの成果を次のように振り返る。「We Are The Waterは、参加者同士がコミュニティを築き、達成感を得ることができた共同作業になったと思います。それだけでなく、自然の美しさがどんなに貴重なものか、そしてその美しさを守ることがいかに大切なことかを実感できる機会になりました。そして、これが話題をよんで、より大勢の人にオンラインニュースで、雑誌の記事として、エキシビションとして伝わっていく。それがこの試みの醍醐味です」。ヘンリクセンはこう締めくくる。

「環境問題は、経済や労働における課題よりもはるかに重要なことだと思います。環境への負担を減らすことは、わたしたちの健康と直結します。自然を破壊したり、石油や水、ガスなどの資源を使い切ってしまったり、土地や空気を汚染すれば、地球で暮らせなくなってしまうからです。だから、わたしは環境問題を取り入れた作品をつくるのです」

3月10日発売の雑誌『WIRED』VOL.15、特集「ワイアード・バイ・デザイン(WXD)」より掲載!
Amazonで購入する>>

今号の「デザイン特集」は74ページに及ぶ、『WIRED』日本版始まって以来の総力特集。トーマス・ヘザーウィックも絶賛する天才クリエイター、ドミニク・ウィルコックスや、「スペキュラティヴ・デザイン」の専門家集団Superfluxのほか、表紙を飾った毛むくじゃらの潜望鏡「EyeTeleporter」、「自由なシェアオフィス」を疑う実験など、新しいものの見方を提示する25のアイデアを紹介! 特集の詳しい内容はこちら。

これからのデザインを体験する! 「WXD」イヴェント開催決定

時間、食、安全、旅、遺伝子、UI…。ぼくらをとりまくすべての「デザイン」について考え、体験するプログラムが目白押し! 5月10日(日)からの約1カ月間にわたり日本各地でさまざまなテーマで行われるワークショップと、6月6日(土)に行われる1Dayカンファレンスを通して、「未来のデザイン」の姿を明らかにする!詳細はこちらから。

WXD特集サイト:「デザイン」をリデザインする25の視点

デザインは、いまのあたりまえをちょっとずつ疑う方法であり、実験だ。3月10日に発売された本誌の特集「ワイアード・バイ・デザイン」では、デザインの領域を拡張し、新しいものの見方を提示する25の事例を掲載している。本誌で紹介したデザイナーや企業のウェブサイト、その関連動画や参考書籍をまとめて紹介。

TAG

ArtDesignEnvironmentMagazinevol15Water