“つまようじ少年”を報じたテレビは共犯者だ|長谷川豊コラム
先週末から、おそらく皆さんも見ていて不快になり、情けなくなったであろう報道が相次いだ。
言うまでもない。「つまうようじバカ」……もとい「つまようじ少年」と報じられた19歳のバカの報道である。
「少年法を改正するために英雄になりたかった」と供述しているこのバカは、東京都内のコンビニなどで、お菓子類の中につま楊枝を混入させているような様子をユーチューブ状にアップするなど、悪質ないたずらを行っていた。
逮捕後、次々と明らかになっていったこの少年の素性。かつて少年院に入っており、2011年2013年と2度にわたり「殺人予告・未遂」などでの逮捕歴があったことも分かった。
ま、簡単に言えばただのバカである。
世の中、日本だけで1億2700万人も人口がいるのである。その程度のバカがいてもしょうがない。それは確率の問題であってそんな人間が一人もいない清く正しく美しい世の中なんてありえない。
なので、この少年は粛々と法に従って罰を受ければいいだけの話である。
視聴率至上主義の低俗ニュース番組問題は、このバカの戯言に乗っかって、視聴率稼ぎに躍起になった低俗ニュース番組である。
これはあまりにも多くの方が同じように思っているようだが、筆者も改めて言いたい。キー局がこんなバカに乗っかって、結局テレビで扱いまくった挙句、このバカの望む「英雄になる=テレビなどでたくさん映って有名になる」ことに協力してどうする。
筆者は14年間、視聴率の高い情報番組でニュースを伝え続けてきたが、少なくとも自分が関わっている間はこんな低俗でバカ丸出しなニュースに「協力」することは間違いなくなかった。
ある報道系情報番組などは、視聴率稼ぎのためであろうか、逃走経路を詳細に分析し始めたり、誇らしげにプレビュー数を自慢するこのバカの音声を繰り返し流したり、少なくとも件の動画を「何回繰り返すんだ!」と突っ込みたくなる回数こすりまくって、結果として「このバカ少年が有名になる手助け」をしまくっていた。
よく考えろ、と言いたい。
このバカの目的はこうやって注目を浴びることである。注目を浴び、有名になり、英雄になることを唯一の快楽として罪を犯しているのである。その目的がはっきりしているにもかかわらず、キーステーションの報道・情報番組がそれに乗っかってしまうことは「公共の電波を使って、バカの手助けをしているだけ」だということに気づいていないのか?
しかも、はっきり言って「バカがバカなことをしただけ」程度のことであり、被害者すらいない。こんなもん、大きなニュースでも何でもない。やってもいいが、短い時間淡々とやればいいだけのことであって、あおりまくって、視聴率を取りに行ってどうする? 乗っかってどうする? こんなバカに。
数字が欲しくてたまらないことは分かるが、公共の電波を担っているものの責任はもっと重い。今回、まる乗りしてあのバカの「協力」をしていた情報・報道番組は完全な共犯者である。
ネット上で拡散されるのはしょうがない。それは個人の自由でやってることだ。公共の電波放送はそれとは違う。内部でしっかりとした反省と話し合いをしてほしいものである。
※あくまで長谷川豊氏の個人的見解です。
著者プロフィールフリーアナウンサー
長谷川豊
フジテレビ出身のフリーアナウンサー。14年間、朝の情報番組「情報プレゼンターとくダネ!」で、現場取材やニュースのリポートを担当。取材した現場数は1700以上。伝えたニュースは2500を超える。退社後はアナウンサーだけではなく、講演・執筆など、多方面で活躍中。現在、TOKYO MX(デジタル9チャンネル)の「バラいろダンディ」(月〜金 夜9:00〜)でメインキャスターを務める他、「キリウリ$アイドル」などのバラエティーの司会も務める。