USTREAM「大阪市市長会見」より

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 橋下徹大阪市長が動き出した。1月13日、「大阪都構想」の制度設計を行う法定協議会は市を5つの特別区に分割するなどの制度案を大阪維新の会と公明党の賛成多数で決定した。3月には府市の両議会で可決される見通しで、5月に住民投票が行われる。

「大阪府・市統合の大阪都構想? アホくさ。あんなん『バカシタ、身内ビイキ、まかり通る(橋下徹大阪市長のこと)』の大風呂敷やん! 赤字だらけの大阪府と、経済が良好な大阪市を統合したら、そらそれなりに“大阪都”の経済は潤うやろ。損するのは今の大阪市民やで。大阪市民は全然、わかってない!」

 語気荒く、開口一番こう語るのは大阪市役所の係長職につくA氏(30代)だ。大阪都構想の実現が現実味を帯びた今、大阪市職員のなかには、「今こそ大阪市民のために市職員は立ち上がらなければならない」との志に燃えて立ち上がる職員が少なくないという。

 そもそも府や市といった地方自治体の借金である府債や市債は、大阪市は2004年度では約5兆5196億円だったが、その後、減少の一途を辿り、2012年度では4兆8261億円にまで減らしている。

 対して大阪府の府債は、2004年度では5兆7409億円だったが、以降、増加の一途を辿り、2012年度には6兆0739億円にまで増加している。

市の借金を減らしたのは関元市長と平松前市長や!

「橋下市長が大阪府知事を辞して大阪市長に就任したのは2011年のことです。大阪市の市債額の減少は2004年以降の話。前々任者の関淳一市長、その後の平松邦夫市長の実績や。他方、大阪府は橋下氏の知事就任前も後もずっと府債は増え続けてる。その辺りをハシモっちゃん(橋下徹大阪市長)は詭弁を弄して言い訳こいてたけど、うちらプロの行政官相手に説得力は皆無やで」(前出のA係長)

 A係長がいう「ハシモっちゃんの詭弁」とは、現在も、大阪府HPに掲載されている「大阪府が努力できる範囲の借金残高は減っている」という主張だ()。

「バカシタの主張は、『収入の範囲内で予算を組む』という言葉をまやかしにして、府民に正義感気取りで取り入っただけに過ぎへん。グラフ上では右肩下がりになるような数字を視覚的にみせ、『俺はこんなに頑張ってるけど、府庁の職員や維新以外の議員が言うこと聞きよらへんねん。可哀想なボクちゃん』と市民にアピールしてるだけや。それでもまあ百歩譲って大阪市を除く大阪府の各市はええかもしれん。でも大阪府の巻き添えを食わされる大阪市民はどないなるんやっちゅう話や!」(同)

大阪城や地下鉄といったドル箱が府に奪われる

 関西の政界では、大阪府よりも大阪市のほうがウマミがあるといわれる。例えば大阪市営地下鉄は、大阪市近隣の各市のみならず近隣県からも通勤利用客、観光客が利用する“ドル箱”といわれている。

「政令市といえども市長よりも府知事のほうが格上や。バカシタとその仲間たちである維新が狙ったのは大阪市が築き上げたウマミに他ならへん。大阪市は都市部ということもあり、地下鉄など財源として見込める優良物件がぎょうさんある。大阪城、海遊館などなど観光収入も見込める。しかし大阪府にはそんなもんない。“大阪都構想”ちゅうのは大阪市が稼いだカネを大阪市以外の大阪府内各市に分配しようゆうもんや! 大阪市民が損するのは目に見えとるがな」(同)

都構想実現で大阪市民の税金はハネ上がる!?

 大阪市民は、当然のことながら市民税のほか府民税も納めている。大阪都構想が実現すれば、「今、大阪市に在住している大阪市民の税金も高くなることは必須」(同)と市職員の間では囁かれているという。

「ちゃんとした議論をしようゆうてた公明党も、あっさりバカシタに白旗上げてるし(笑)。まあ彼らは自分の党の支持者と与党でありたいという意識しかないから仕方ないけど。ホンマ、コウモリみたいなやっちゃ。維新と何を結託したのかしらんけど、ちゃんとした市政の議論ができるのは、大阪ではせいぜい共産党と、妥協して民主党系かなと思うわ」(同)

 大阪都構想を問う住民投票は今年5月に実施される運びとなった。その際、「これで大阪市民が「都構想賛成」したらホンマに市民のアホさがようわかる。よその市に恵むほど余裕がある高邁な市民にお仕えできて行政マンとしては光栄でございますわ(苦笑)」(同)

 はたして大阪都構想、橋下市長お膝元の大阪市民はどう判断するのか。大阪市民の民意が問われる住民投票でもある。

(取材・文・写真/川村洋)