TVアニメ「聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>」公式サイトより

写真拡大

 1月15日よりニコニコ動画で、アニメ「聖剣使いの禁呪詠唱(ワールドブレイク)」第1話の配信が始まりました。

 最近はアニメも見なくなって久しい筆者ですが、ツイッターのTLに「これはアニメ版スポーティングソルトだ」という不穏な呟きが流れてきたので、見ざるを得ない義務感に駆られて視聴してみました。

 ちなみに「スポーティングソルト(Sporting Salt)」とはいま筆者が最も注目しているジャンプ漫画で、全くミステリーとは関係ないスポーツ医学漫画ながらも、何を言っているのかさっぱり分からない作劇と全くイメージを掴み得ない不思議設定ゆえに「謎解き漫画」として一部読者から愛されている作品です。一話読み解くのに毎回六時間くらい掛かる。

1秒たりとも面白くないアニメ

 で、話を戻しますと、このアニメの内容が確かになんとも凄まじくてですね。

見ていて呆然とする程の中二病設定突然出てくるサンシタ臭溢れるモブキャラ安易の極みというべきお色気サービスシーンあざといを通り越し、狂気に片足突っ込んでいるヒロインのキャラ性そのヒロインが性的サービス(「勝ったらキスしてあげるから」)を提案するが全く嬉しくない敵の攻撃であまりに不自然にヒロインの服だけ破れる突然過去を語り出し、感情を昂ぶらせるヒロインなんの捻りもない展開主人公がなんとなく仇討ちに主人公がなんとなく覚醒して勝利

 24分間のうち1秒足りとも面白い時間がないという凄いアニメでした。「突然出てくるサンシタ臭溢れるモブキャラ」「嬉しくないお色気シーン」「狂気をはらむヒロイン」「ヒロインが突如過去を語り出す」など確かにスポーティングソルトに通じるところがある……。

 という感じで、クリシェとお色気だけを繋げて構成されたようなアニメでして、「最近のアニメはこれでいいのか?」と少し愕然としたんですが、一方では「これ全部ネタで、狙って『一般的にイメージされるレベルの低い中二病ラノベアニメ』をやっているのでは?」という説もあるんですよね。「全部ネタ」説の根拠としては……

原作者のあわむら赤光氏は「あるいは現在進行形の黒歴史」という中二病をネタにした作品を書いており、本作も無意識的な中二描写とは思えない本作の監督は、カオスアニメとして名高い「ジュエルペットサンシャイン」を手掛けた稲垣隆行氏冒頭に登場する大魔法である「サンダーストームフェニックス」のネーミングセンスが、本気で中二病をしているにしてはダサすぎてギャグの可能性が高い七三分けのメガネ教師がピチピチスーツに身を包んで特殊能力を使うのは意図的なギャグではないのか?

 などなど……。フゥーム、確かに完全に無意識的にやっているとは思えない……。ニコニコ動画でも「フッキンブレイク」「ツッコんだら負け」などのタグが付けられ、ギャグアニメとしては評価されている……のかな?

 過去にも「カブトボーグ」という、テンプレ玩具アニメのフリをした傑作カオスアニメがありました。テンプレ表現をデフォルメ(強調)するのはギャグとしてはそう珍しいことではありません。カブトボーグ同様に本作も「中二病ラノベアニメのフリをしたカオスアニメ」なのでしょうか? 

 ただの中二病ラノベアニメなのかギャグが高度すぎてロートルには付いていけない傑作カオスアニメなのか、最近のアニメの動向、僕にはもうよく分かんなくって混乱しております。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)