解体間近の戦跡「府中米軍基地」に行ってみた
カンボジアのベン・メリア遺跡のように、植物が建築物を侵食して成長していく様は、とてもロマンチックである。しかしカンボジアやラオスだのにわざわざ出かけるのは大変である。
でも、日本でもそんな遺跡があるなら見てみたいと思わないだろうか? それも軍艦島など遠く離れた離島に行く必要はない。なんと東京都内で見ることが出来るのだ。
都内で味わえるカンボジア遺跡探訪気分場所は、東京都府中市浅間町。テニスコートやバーベキュー場、美術館などを備えた大公園の北側にある『府中通信施設』と呼ばれる場所だ。『米軍基地跡』と呼ばれることもあるのだが、まだ一部が使用されているため、厳密には廃墟ではない。……とは言え、ほとんどの部分は完全に廃墟化している。
施設の周りには高い鉄条網が敷かれて、中には入れなくなっている。「立ち入り禁止」の看板はあるものの、特に気を止めずに通りすぎてしまう人がほとんどだと思う。しかし中をのぞき込むと、かなりディープな世界が広がっている。
この場所はもともと旧日本陸軍の施設があったが、戦後米軍に接収され、米軍の軍施設が建てられた。以降かなり重要な役割を果たした基地だったが、1975年にその大部分が返還された。
その土地は、自衛隊基地、府中の森公園、中学校などに利用されているのだが、ほんの僅かな場所だけが廃墟になっている。
金網から中を覗くと、軍の施設だった場所に樹が生え根をはり、まるでジャングルの様な様子になっている。
ダクトが張り巡らされた倉庫のような施設や、瓦屋根の和の施設もある。どれも樹に覆い尽くされている。
閑静な住宅街の中にある光景とは思えない、ワイルドな風景だ。アジアンな光景に心打たれること間違いない。
この施設一番の目玉は、特大のパラボナアンテナ2機と、通信用電波塔だ。街中にあるにはあまりに、異質なので、どうしても注目してしまう。廃墟ファンの中でも人気が高い施設だ。僕が取材をした日にも、廃墟ファンの女の子たちが写真を撮りにきていた。
「やっぱカッコいいよね。アンテナ〜」
と自撮りをして満足そうだった。
近くの民間の駐車場から見える光景は、全体がツタに覆われた軍施設のかなたに、巨大パラボラと電波塔が佇んでいる様子が、まるで映画やゲームのようで、すこぶるカッコいい。
しかし残念な事に、『国立医薬品食品衛生研究所』の移転にともない、周辺の残存施設全てが解体撤去されることが決定されている。
日本でカンボジア遺跡探訪気分が味わえる『府中通信施設』。ぜひ今のうちに、目に焼き付けておいてほしい!!
あ、もちろん敷地内は国有地にて立ち入り禁止。警察の御用になりますのでお気をつけください。
(取材・文/村田らむ)