郵政マネーの流入で続く官製相場…株価2万円を目指す
日本郵政は2014年12月26日、同社と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社を、2015年秋をメドに同時上場する計画を正式に発表した。
日本郵政ほど政治に翻弄された企業はない。政権交代の度に、民営化の方針は右に左にぶれた。今も、将来の具体像が描かれているわけではない。
発表によると、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、「(親会社の日本郵政の持ち株比率が)50%程度になるまで段階的に売り、グループ内の有機的な統合が担保されているかを検証」(西室泰三・日本郵政社長)したうえで、残りの株を売っていくという。
わかりにくいが、郵便事業に支障をきたさない範囲で民営化を進めるということで、そのためにも金融2社の収益力強化が求められている。
2015年の早い時期に日経平均株価2万円を目指すその際、政府の要望に沿いながらも独自性を発揮、収益力の向上に役立つと思われるのが、資産構成の見直しである。
ゆうちょとかんぽの「郵政マネー」の資産規模は、メガバンクや大手生保を大きく上回る300兆円。これまで郵政マネーは、国債の受け皿にされており、巨額資金の約7割を国債で運用してきた。
この国債比率を徐々に落とし、株式などに振り向ければ、収益向上につながるし、アベノミクスを援護することにもなる。つまり郵政マネーの第2のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)化である。
周知のように、GPIFは資産構成の見直しに踏み切り、国債の比率を大幅に引き下げ、株式を12%から25%に引き上げた。そのために国債の需給が悪化すれば日本銀行が出動する。
日銀の黒田東彦総裁は、10月31日、GPIFが国債の残高圧縮を発表する直前、それを上回る規模の追加金融緩和を打ち出した。いわゆる「黒田バズーカ」である。
12月14日の総選挙で自公が圧勝。金融緩和のアベノミクスが支持されたと判断する安倍政権は、あの手この手の株高政策を打ち出し、2015年の早い時期に日経平均株価2万円を目指す。
GPIFにも限界がある以上、その受け皿は第2のGPIF、郵政マネーに頼らざるを得ない。2015年も「官製相場」は続くのである。
伊藤博敏ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある