写真提供:マイナビニュース

写真拡大

日本マイクロソフトとYRPユビキタス・ネットワーキング研究所が提携、Microsoft Azure上に、同研究所が推進するUbiqquitous IDアーキテクチャのプラットフォームを構築する。今後、オープンデータ、ビッグデータのプラットフォーム、さらにIoT、ユビキタス技術のプラットフォームの構築に向けて共同開発をすることで合意した。

○日本マイクロソフトがAzureでucode空間プラットフォームを支援

YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、身の回りのあらゆるモノに通信能力を持つマイコンやセンサーなどを埋め込み、それらが相互に情報交換をしながら協調動作し、人間生活をより高度にサポートする環境を構築し、その基盤となる次世代通信プロトコルを確立するために設立された研究所だ。所長は坂村健氏(東京大学教授、工学博士)で、横須賀リサーチパークの中に設立されてからほぼ10年が経過している。

坂村博士はリアルタイムOS「トロン (TRON)」で有名な人物だ。最近では、組み込みだけではなく、クラウドと組み込みがつながっていくということで、もっとトータルにIoT的なことをやっていきたいとしている。

同研究所は、あらゆるものに世界で一意となるucodeと呼ばれるIoT向けネットワーク解決型汎用識別番号を割り当て、個体を識別し、モノや場所といった識別情報を得るための国際標準を生み出した。つまり、すべてのモノに番号を振り、その番号からさまざまな情報を得られるようにしようというチャレンジだ。すでにucodeは国際標準としてとして、ITU--Tで承認されてもいる。

たとえば、ucodeをサーバーに送ると、サーバーから情報が返ってくるが、そのときに、場所や状況、時間などを反映した、さらに詳しい情報が得られる仕組みだ。このことを利用して、公共交通機関のオープンデータシステムや、情報流通連携基盤システムなどとの連携により、ココシルやココドコといったマーカーを使ったさまざまな実験を繰り返してきた。

今回の提携は、図式としては、同研究所のチャレンジに将来性を見いだした日本マイクロソフトが、Azureのリソースを提供、それを同研究所が受け入れたというかたちだ。Azureのプラットフォーム層とサービス層にYRPの要素を組み込んだ基盤を作り、さらなる標準化を狙う。将来的に、この研究がより具体的に国際標準と認められるようになれば、Azureの標準サービスとして取り入れる可能性も視野に入った提携だ。

○IoTによって今のマイクロソフトの3〜4倍規模のビジネスチャンスが生まれる

加治佐俊一氏(マイクロソフトディベロップメント株式会社代表取締役社長、日本マイクロソフトCTO)は、これからIoTによって、マイクロソフトがあと3つか4つできるようなビジネスチャンスが生まれようとしているという。センサー同士がつながることで、大きな変化が起こり、世の中を変えていくだろうとも。そのためにAzureにおけるインテリジェンスシステムサービスが貢献できるだろうというわけだ。

今、インターネットの世界はIPアドレスによる名前空間で成立しているが、ucodeはモノによるもうひとつの空間を作ろうというチャレンジといえそうだ。ucodeは128ビットのコードなので、単純に考えれば同じ固定長を持つIPv6アドレスで代替できそうに考えてしまうのだが、坂村氏によれば、IPアドレスはダイナミックに割り当てられ、対象が引っ越して入れ替わることを前提としたものであるが、ucodeは完全に固定された住所そのものであり、空間としては別にする必要があるという。

このテクノロジーに準拠したココシルマーカーがあちこちに設置されれば、スマートフォンは10センチ単位の誤差で自位置を把握でき、GPSとは比較にならない精度の位置情報が得られる。それがビッグデータとつながることで、人々の暮らしに役にたつさまざまなことができるようになる。

バス停でバスを待つときに、次のバスがいつ来るかを知るためのシステムは、さまざまな組織がさまざまな方法で実現しているが、標準化されたソリューションがあれば、世界中の人々が便利に使えるというわけだ。

今のインターネットが古式ゆかしきBINDによるDNSによって成立し続けているのと併行して、モノ空間サービスが、日本発として標準化し、それが世界で使われるようになればという夢も膨らむ。今後の展開に注目したい。

(山田祥平

(山田祥平)