どれが仏具がわかりますか?

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先日、近所のショッピングセンターで、盆ちょうちんの即売会をやっていた。まだそんな時期ではないが、とりあえず準備はお早目に、ということだろう。とくに必要ないので通り過ぎたが、いつかは私もちょうちんやら盆用品やらを買い求める日も来るのだろうか? しかし、都会のマンション暮らしでは置く場所もない。

そう思っていたら、まるでインテリアのようにオシャレ、しかも場所を取らない仏具があることを知った。仏具の生産日本一である富山県高岡市の老舗メーカーが手がける仏具ブランド「Sotto(ソット)」だ。

コンセプトは、「暮らしにそっとよりそう仏具」。仏壇を置く仏間がないようなマンション暮らしであっても、日々の暮らしにそっと溶け込み、個人と身近に寄り添うことができるように、との思いで作られている。まるでインテリア雑貨のようにスタイリッシュなデザインは、和室にも洋室にもよくなじむ。

現在のところ、アイテムは全3種。どれもデザイン性に加え、機能性も優れているのが特徴だ。7月初旬に新発売となる「Pictuary(ピクチュアリ)」は、遺物を保管するためのメモリアルボックスとフォトフレームが一体化したもの。丸いボックスに、分骨や指輪、思い出の品を入れ、木製フタの切れ込みには故人の写真を立てられる。

一石三鳥ともいえるのが、「Chering(チェリング)」だ。仏具の三具足である火立、香炉、花立てをシンプルにまとめたもので、日常は一輪挿しとして、特別なときには香炉と火立として使える。

そのほかに、手を合わせる時に音を鳴らす“おりん”「Cherin(チェリン)」がある。

もともと、寺院用や家庭用にベーシックな仏具を手がけてきたメーカーが、このような新しいスタイルの仏具を作るようになったのは、2010年におりん「Cherin」を発売したのが始まり。以降、“居間やダイニングのような日常のスペースにすっと溶け込める仏具”をテーマに新製品の研究を続け、2012年には「Chering」を発売。そして、今年7月初旬の「Pictuary」の発売を機に、新ブランド「Sotto」を立ち上げた。

なぜ、このような斬新な仏具を作ろうと?
「開発メンバーの1人の親族が亡くなったとき、大切な人だったので、一人暮らしでも写真以外に何かしらの弔いの場を作りたいと考えたのですが、今までの形の仏具は部屋の雰囲気を台なしにしてしまうので、置くことができなかった経験もきっかけの1つになっています」
と同ブランドの担当者である瀬尾良輔さんは話す。

「都市部で、和風の建物ではなく、仏間がない家に置くことを想定しているので、インテリアに気を配る人が、お部屋の雰囲気を壊さないように置けるかたちを目指しました。仏具としてきちんと用いることができて、かつ今までにないものを目標としたので、何度も試作を繰り返し、開発には年単位の時間がかかりました」
と瀬尾さん。

すでに販売している「Cherin」は口コミで評判を呼び、すでに累計3万個以上を販売。おもに都市部に住む40代前後の女性を対象にしているそう。今後はさらに開発を進め、アイテムも拡充していくとのこと。

たとえ仏壇があっても、それに向かって手を合わせる時間がなかなか取れない忙しい人も多いはず。変わり続ける住環境に合わせた老舗仏具メーカーからの新提案。これからはこういう供養のスタイルもありなのかもしれない。
(古屋江美子)