ザンビア戦での本田圭佑 (写真:AP Photo/John Raoux)

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 これが4年前なら、「チームの方向性を示す試合だった」と言うことはできる。2013年の段階でも、「このチームらしい勝ち方だ」と、ひとまず評価することはできた。

 だが、ワールドカップの初戦を1週間後に控えた6月6日に、本大会に出場できないザンビアと演じた撃ち合いには、不安を感じざるを得ない。試合後の吉田麻也は、「こんなシーソーゲームになるような展開は望んでいない。内容も結果も質の高いものにしたかった」と、表情に悔しさをにじませた。

 得点経過が良くない。0対1、0対2、1対2、2対2、3対2、3対3、4対3という流れをたどった一戦は、ザンビアがオープンなゲームを選んだからに他ならない。W杯の対戦国ならば、2点リードした段階で違った試合運びを選ぶだろう。今野は言う。

「本大会で0対2になったら、相手もかなり守備に力を入れてくる。今日みたいなことはあってはいけない」

 失点の時間帯も良くない。開始8分でスコアを動かされ、30分を前に2点目を奪われた。前半のうちにビハインドを背負うのは、コスタリカ戦に続いて2試合連続だ。ゲームの入り方は、ここにきて大きな課題となっている。

 香川も険しい表情を浮かべた。

「これが大会前でホントに良かったですし、立ち上がりに2試合連続で失点している意味では、もっともっと危機感を持たなきゃいけない」

 危機感という言葉は、本田も使った。

「こんなふうに3失点をしたら、コートジボワール相手に4点取れる可能性はゼロに近い。そういう危機感で入っていかないと」

 長友は「結果をネガティブにとらえていない」と強調した。それでも、「今日みたいなサッカーをしたら、コートジボワール戦は間違いなく勝てない」と話す。なめらかな口ぶりは、思いを明かすことで気持ちを整理しているようでもあった。

「追いついたのは評価できるし、力がついてきたかなとは思うんですけど、コートジボワール相手だと……結局、そこを見ないといけないんで。ザンビア相手にできたとしても、コートジボワール相手には通用しないところがいっぱいあるし。ザンビアに1対1の局面で負けたら、コートジボワールの前線に勝てるはずがない。ネガティブにはとらえてないですけど、気を引き締めないと」

 コスタリカ戦で3点、ザンビア戦で4点と、アタッカー陣がゴールの感触を携えてブラジル入りするのは、アメリカ合宿の成果にあげられる。香川、本田、柿谷、そして大久保と、取るべき選手がネットを揺らしたのも好材料だ。柿谷と大迫に大久保を加えた1トップの争いは、アメリカ入りする以前よりレベルの高いものとなっている。

 スリルのそばには勢いがある。ザンビア戦のような試合展開でコートジボワールを下せば、チームは推進力をつかみ、一体感も高まっていくだろう。

 スリルのそばには破滅も潜む。

 このチームのスタイルである「攻めきる」ことに対してブレず、勝利するために必要な修正を施せるか。6月14日までの一週間弱の時間が、これまで以上に重要な意味を持っている。