タブレット端末の販売競争が過熱している。先駆者、米アップルは2013年10月22日、「iPad(アイパッド)」の最新モデルを発表。年末商戦を前に、失ったシェアを奪回しようと必死だ。

韓国サムスン電子や中国、台湾メーカーは、低価格を武器に勝負する。一方、ソニーなど日本メーカーの存在感は国内外ともに薄い。

市場は常にアップルに期待

アップルが発表したのは、薄さ、軽さを追求した「iPad Air(エア)」と、「iPad mini(ミニ)」の最新モデル。エアは9.7インチと画面の大きさは変わらないもの、厚さを7.5ミリと従来より約2割薄く、重さも469グラムと約3割軽くした。データ処理能力も従来の約2倍に高めた。価格は499ドルから。一回り小さい7.9インチのミニは、高精細ディスプレーを搭載。価格は399ドルから。旧型の「iPad2」やミニも、最新モデルより価格を抑えて販売を継続し、より幅広い価格帯の商品をそろえた。

最新モデルについて、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は「アップルだけが提供できる製品」と革新性をアピールした。市場関係者の間では「アップルは消費者の期待に応えた」と評価の声がある一方、「改良版の域を出ず、驚くほどの製品ではない」と厳しい見方もある。

厳しい評価の背景には、アップルへの期待が高すぎることもありそうだ。アップルは2001年に発売した携帯型デジタル音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」をはじめ、スマートフォンの「iPhone(アイフォーン)」、そしてiPadと、従来にはない新しい製品を世に送り出し、市場を切り開いてきた。同社を創業したスティーブ・ジョブズ氏が2011年に亡くなって以降も、市場は「アップルは何かやってくれるはず」と期待している。

アマゾンやグーグルも参入

ただ、かつての勢いはない。2010年にiPad初代機を発売し、世界シェアの8割を占めたが、昨年4〜6月期は6割に、さらに今年4〜6月期は3割に落ち込んだ。アップルが10月29日に発表した7〜9月期の販売台数は1410万台で、前年同期とほぼ横ばいだった。

米調査会社IDCは、タブレット端末の世界出荷台数が、2015年にパソコンを上回ると予測。有望市場を取り込もうと、サムスンをはじめとするアジア勢が次々と参入している。サムスンのシェアは今年4〜6月期、前年同期比2倍以上の18%を占めたほか、低価格が売りの中国、台湾勢の追い上げも激しい。お膝元の米国でも、アマゾン・ドット・コムの「キンドル・ファイアHDX」や、グーグルの「ネクサス7」(台湾エイスース製)、マイクロソフトの「サーフェス2」などがひしめく。どの製品が受け入れられるのか、年末商戦の行方が注目される。 一方、ソニーや東芝、NEC、富士通など国内勢もタブレット端末を作っているものの、世界競争の「蚊帳の外」に置かれている。国内の個人向け市場は、iPad人気が根強い。これまでパソコンで納入実績のある企業や自治体向けに営業攻勢をかけ、細々と食べていくしかない状況だ。