中盤に突き放した東海大菅生、完封で2回戦進出 

先発・井口君(都立武蔵丘)

 秋晴の好天というよりは、まだ気温が31度にもなるという夏の大会のような中で、この日から第一次ブロック予選を勝ち上がった48校による秋季東京都大会が始まった。

 ブロック予選では19対1、8対0、代表決定戦でも錦城学園に10対0と圧倒的な点差で勝ち上がってきている東海大菅生。スコアだけではなく、その内容もいいということで今大会は前評判も高かった。

 これに対して武蔵丘も、ブロック予選では昨夏の甲子園出場校でもある成立学園を下し、都立東大和にもコールドで勝ち上がってきた。その原動力となっているのが、左腕井口君だが、大きく入ってくるカーブが低めに決まり、制球が乱れなければ、面白くなるだろうなと、そんな予感を漂わせていた。序盤は、その予想通り、東海大菅生打線がやや打ちあぐんでいた。

 4回を終わって東海大菅生は4番富塚君の二塁打一本のみ。武蔵丘も、東海大菅生の高橋君に対して無安打で、投手戦といった展開だった。こういう試合になっていくともちょっとしたミスが命取りとなりかねないのだが、それが5回、武蔵丘に出てしまった。

 この回、東海大菅生は一死後、6番小磯君が振り逃げで出ると、続く小川貴君は送りバントというよりは、意識してセーフティを狙ったバントだったのだが、それが見事に決まった。さらに、暴投があって二、三塁となったところで、8番吉永君が左中間へ三塁打を放って二者が還った。その後のスクイズはキャッチャーファウルフライとなり失敗したものの、その直後に再びバッテリーミスが出て、東海大菅生はこの回3点をゲットした。

 

5回、タイムリー三塁打した吉永君が暴投で3点目のホームを狙う

 6回にも、5番仙波君のセンターオーバー二塁打と、内野手の失策で追加点を挙げ、7回にも四球の吉永君を1番和田君がライト線三塁打で返し、自身も犠牲フライでホームインしてさらに2点。9回にも三番勝俣君のタイムリーで1点を加えて、結果的には快勝となった。

 味方のリードで、高橋君も余裕の投球で、終わってみたら11三振で完封。 しかし、若林弘泰監督は、「ちょっと、見ていてイライラさせられる投球でしたね。まあ、それが持ち味と言えば持ち味なのかもしれませんけれども、もう一つというところでした」と、なかなか厳しかった。 このあたりは、期待の裏返しというところもあるのかもしれない。

 しかし、チーム全体の試合運びに関しては、「初戦ですから、(序盤苦しんだのも)こんなものだと思います。ある程度の接戦は予想していましたから、むしろ後半よく取りましたよ。ウチは、守りのチームですから」と、前半の無得点状態も十分に想定内だったようである。

 善戦しながらも、最後は力の差が出てしまったという印象の武蔵丘。

 江里口肇一監督は、「これが実力ですよ。こっちが、先にミスをしてしまっていては、こういう相手には勝てません。ブロック予選では、そのミスが出なかったんですけれどもね」と、ミス絡みの失点を悔いていた。

 それでも、左腕井口君の投球は、なかなか見どころがあった。カーブが大きいだけに、打ちづらいタイプと言えよう。また、リードする寺沢君も、いつも大声でチームを引っ張っており、この日は安打こそなかったものの、打っても4番。好感の持てる選手だった。

(文=手束 仁)