美里工vs嘉手納 打っては3試合連続二桁安打！投げては12奪三振で九州大会のキップを掴む！
美里工・宮城諒大
1年生中央大会、新人中央大会の二冠を達成し、新チームの公式戦で未だ無敗の美里工。2、3回戦の2試合を終えて25得点（4失点）、58打数27安打でチーム打率は0.466とくれば、浮沈艦だの怪物だのというような肩書きさえ陳腐に思えるほどだ。
その中心に座るのが宮城 諒大（りょうた）。一年生の夏からレギュラーの座を務める男は、この秋8打数5安打で打点は9、本塁打も満塁弾を含む2本をマーク。この日は良いところ無しに終わったが、昨年の大会で同じく2本塁打を放った比嘉 健汰（美里）のような強烈な存在感を宿している。
さて以前、秋季大会の展望で書かせて戴いたが、その美里工の対抗馬として挙げていた嘉手納が勝ち上がってきた。1回戦から3試合を戦って29得点（6失点）、チーム打率は3試合連続二桁安打の95打数39安打で0.411と、唯一互角に打ちあえるかもしれない雰囲気をまとっていた。
その嘉手納の中心に座るのが知花 由樹。新人中央大会で本塁打を放った右のスラッガーは、陽明戦でも右中間の最深部まで運ぶ三塁打を放つなど10打数6安打4打点。
「僕らは打ち合いに持ち込むしかない」と嘉手納大蔵宗元監督が意気込むほどに打線が仕上がってきていたが、悔やむべきは、制球難に陥ってしまった先発・桃原瑠希（とうばる・りゅうき）の不出来だった。
1回、美里工は一死から西藏當 祥が四球を選ぶと、3,4番と連続四球で労せず満塁のチャンスを得る。ここで打席に入った花城 航が、しぶとく前進守備の間を破りライト前へ転がすと二塁走者も一気に生還し2点を先取した。
嘉手納・知花由樹
だがその裏の守りに向かう美里工ナインを見て、一瞬我が目を疑ってしまった。サードにいるはずの花城航の姿が無く、先発出場していなかった高江洲大夢（ひろむ）が立っていたのだ。「確かに先制タイムリーではあったけど、その前に制球に苦しんでいるピッチャーのボール球を振りに行くなど、雑なところが見えたんだよね」と美里工・神谷嘉宗監督は振り返った。
高江洲大夢にしても心の準備など難しい場面であったろうし、何より九州切符が懸かる試合で下した指揮官の判断は、もしかすると流れを変えかねないものなのかもしれない。だが先制点を叩き出した選手をも瞬時に下げてしまう厳しさの中で彼らは勝ち続けてきたのだし、結果それに耐え得る選手層の暑さを誇るまでになった。全ては甲子園出場という目標を達成し且つ、そこで勝ち続けていくため。
そんな強さを持つ美里工は2回には一死二塁から西藏當祥のタイムリー二塁打で1点を追加すると、相手エラーで一、三塁として内野ゴロの間に三塁走者が生還し4対0と試合を優位に進めていった。
追う嘉手納は3回、ツーアウトから具志堅優人が四球で出塁するとボークと内野安打で一・三塁とし、ワイルドピッチで1点を返す。
だが先発のマウンドを任された桃原が、初回に続き4回にもニ死一塁から三者連続四球で押し出し点を献上。合計7つの四球を与えてしまっては、もはや互角に戦うことはあり得なかった。
7回には一死ニ・三塁から、伊波 友和がセンター前へ運びダメ押しとなる2点を刻むなど、13安打を集めて快勝。この日の北谷公園野球場はレフトからライトへの強い風が吹いていたが、7本がセンターからライトへの打球であり、西藏當 祥の二塁打など3本のレフト側へのヒットも左打者が外のコースに逆らわず運んだ打球。且つ2本のバントヒットを決めるなど、状況状況に応じた打撃力が光る試合でもあった。
１２奪三振の力投を見せる美里工・伊波友和
「実はコントロールも定まらないし最悪でした」と話した美里工の先発・伊波 友和。試合直前のブルペンで調子が上がらないままマウンドへ上がらねばならなかった。1回裏、先頭の具志堅にいきなりセンター前ヒットを打たれ「ちょっと動揺した」と言うが、次打者の犠打を自ら処理して一塁走者を二塁で刺すと、要注意の知花 由樹と大城 璃功を外野フライに打ち取った。
だが前述したワイルドピッチで点を与えてしまうなど、苦しんだ前半のピッチングに「だらしない。いつ変えようかと考えてた」という神谷嘉宗監督だったが、4,5回を三者凡退で斬りいつもの伊波 友和に戻りつつあったことで続投。強打の嘉手納が相手とあって、あとは試合の流れを変えないため最後まで投げさせ、結果12奪三振で完投した。
思い起こせば約1年前の10月2日、同じ北谷公園野球場の同じ準々決勝という舞台で宜野座戦に先発した伊波友和。8回を投げ被安打16で失点8（自責点7）を喫した彼は、この1年で沖縄尚学の山城 大智にも全く引けを取らない沖縄県を代表する右腕へと成長した。
最悪の状態でも「マウンドに上ったら抑え込むことが出来た」という頼もしい男は、「でもみんなが声をかけてくれた」ことで力を漲らせることが出来たとも語るところに、美里工の強さを伺い知れる。
「第1シードとして臨む大会ということで、勝って九州へ行って。。。という期待を周りが持っていることは知っているけど、勝って当然の試合はないし、相手があることなので、自分たちの野球をすれば勝てるということでもない。そういう中で今日（九州大会出場を）決められたことで内心ホッとしています」と話す神谷嘉宗監督。見事な試合運びで、美里工にとっては1992年以来となる2度目、神谷監督自身は浦添商を率いていた2006年以来の九州大会行きの切符を手に入れた。「1位校として臨むのとそうでないのは全く違う」（神谷嘉宗監督）。
今夏の選手権沖縄大会で決勝まで進みながら沖縄尚学に敗れた。あと一歩で聖地への道を逃したからこそ、この秋でも優勝し県1位校として九州大会を戦うことが、来春選抜出場への道に繋がることを信じてやまない。そんな勝利への飽くなき姿勢を見せる美里工ナインに、現時点では死角が見当たらない。
（文・写真：當山 雅通)
美里工業TEAM嘉手納守備位置氏名打順守備位置氏名中堅神田 大輝1番中堅具志堅優人二塁西藏當 祥2番三塁知花卓夢一塁宮城 諒大3番一塁知花 由樹左翼前原信元4番遊撃大城 璃功三塁花城 航5番二塁上地怜汰右翼松堂正6番左翼古謝帝捕手與那嶺翔7番投手桃原瑠希投手伊波 友和8番捕手古謝脩也遊撃石新恭士9番右翼比嘉啓太
