「過労のアリを横目に、キリギリスは夜の街へ」 ツイッターの「IT系童話」が怖すぎる!
IT系企業でのブラックな職場の様子を紹介し合うツイートが、ちょっとした流行になっている。それは、「IT系童話」としてまとめられ、話のネタになっているようだ。
「おばあさんが川でコードの洗濯をしていると、上流工程から大きな案件がドンブラコ〜ドンブラコ〜と」「なんと中から元気の良いトラブルプロジェクトが飛び出してきました」
これは、現在休職中という熊本県在住のプログラマのつぼっこさんが2013年9月17日にツイッターでつぶやいたものだ。
IT系企業で働く人たちの悪戦苦闘ぶりが浮き彫り
そんなツイートは、この日ぐらいから「♯IT系童話」のハッシュタグに集められ、現在も投稿が相次いでいる。
いずれも、桃太郎や鶴の恩返しなどの昔話や童話を下敷きにし、ほのぼのとしたタッチでつづられている。しかし、その中身はと言えば、IT系企業で働く人たちの悪戦苦闘ぶりが浮き彫りになるようなものなのだ。
例えば、Doom“HHH” Mageさんは、思いやりのない上司の下で働く部下の苦悩を表現するかのように、こうつづった。
「蟻は夏の間額に汗し黙々と働いていました。キリギリスは日中は居眠り、夜は接待で楽しそうな毎日を送っておりました。そして冬になり、蟻は過労で体を壊し退社、次の蟻が配属になりました。キリギリスは新しい蟻が寝ずに働く姿を見ながら、今日も夜の街に繰り出しました」
一方、神奈川県在住のSEは、上司が部下の仕事ぶりに頭を悩ませるシーンを連想させるようなツイートを寄せた。
「『私が実装している間、決して開発室を覗いてはいけません。』青年は約束を破ってこっそり覗いてしまいました。するとそこでは鶴がGPLのソースコードをコピペして変数やメソッド名を適当に置き換える作業をしているではありませんか」
「童話の中に、裏側の世界がにじみ出ている」
最近多いツイッターやフェイスブックの炎上をヒントにしたようなツイートもあった。
うさぎの飼い主さんは、その悲劇をこんなエピソードにした。
「『そのノートPCは社外で開けてはいけません。』 しかし浦島太郎は約束を破りスタバでおもむろにノートPCを開き、ドヤ顔で仕事の出来る男の振りをしてしまいます。その姿は煙のようにあっという間にTwitterで拡散され、コンプライアンス違反でクビになりましたとさ」
ネット上では、こうした「IT系童話」について、異論もあるものの、「面白かった。IT系のまとめってなんでこんなに悲劇に満ちているんだろう」「童話って本当はこわいって言いますけど、IT系童話もどうしてなかなか...」といった感想が漏れていた。
自らのブログで「IT系童話」のツイートを紹介したプログラマの中村正三郎さんは、取材に対し、「思わず知らず、童話の中に、IT業界の裏側がにじみ出ている」とみる。
例えば、政治力のある大手のソフト会社が下請けソフト会社にソフトウェア開発を丸投げしているような内容を表したツイートだ。
「日本の大手ハードメーカーにとって、ソフトは傍流で、ソフト開発は子会社の仕事なんです。さらにその下につながる下請けは、マージンを抜かれ、少ない予算で悪戦苦闘しているのですよ」
お役所とのパイプで公共事業のように仕事をもらうITゼネコンといわれる会社もあり、そういう会社は市場で揉まれてないから、世界で戦う実力がつかないと指摘する。「世界と戦えるのは、そんな会社ではなく、ネット企業に多い、独立系の若いソフト会社です」
また、IT業界のデモンストレーションは、製品を出す前から行うことから、プログラマなど技術者に無理がかかることが多いという。
「製品が完全に仕上がっていないから、プレゼンの間だけうまくいくように細工するのです。あのスティーブ・ジョブズも、それが得意技だったそうですよ」