『中日ドラゴンズあるある2』(大山くまお著・河合じゅんじ画、TOブックス)
今年1月に刊行された第1弾に続くシリーズ第2弾。ルナの活躍など今シーズンのチーム事情も反映、これを読めば終盤に入ったペナントレースがより楽しめるはず!

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■8月○日
調べ物で愛知県図書館へ。その帰りがけ、名古屋駅地下街の某書店の前を通りかかると、大山くまおさんの本『中日ドラゴンズあるある』のPOPが掲示されているのを確認。思えばこのお店には、例のPOPがここ半年ほどずっと出ているような気がする。また、この書店にかぎらず、地元の書店に行くとたいてい本書が平積みになっているのを見かける。聞けば、同書は3刷までいったとか。先に、大山さんは出演したトークイベントで、重版の秘訣の一つとして「地元ネタの本をつくる」をあげていたけれども、この本はまさにそれが当たった例といえる。好評を受けて、今月には第2弾として『中日ドラゴンズあるある2』が出たばかり。私もさっそく入手した。

第2作というと、本でも映画でも第1作とくらべたらいまいち……というものが少なくないが、少なくとも本書に関してはそれはあてはまらない。というか、前作にも増して濃い内容になっており、現在のチーム・選手から、往年の名選手、さらには地元カルチャーに関する「あるある」まで網羅している。

イラストを、『かっとばせ!キヨハラくん』などで知られるマンガ家の河合じゅんじ先生(愛知出身でやはり熱心なドラゴンズファンとか)が担当しているのも、『キヨハラくん』ド真ん中世代にはうれしい。本文中、《018 アンチ巨人だが 桑田の発言に納得しがち》に添えられた桑田真澄の似顔絵が、まさに『キヨハラくん』に出てきたクワタそのままで、思わず笑ってしまった。

■8月△日
上京したおり、愛知に帰る前に、今月末をもって閉館してしまう大手町の逓信総合博物館に出かける。電報や電送写真(ファクシミリの一種)など通信技術の歴史を紹介するコーナーに、1955年のプロ野球オールスターゲームの報道写真がいくつか展示されていた。そのなかに、第2戦でMVPを獲ったドラゴンズの西沢道夫の写真を見つけ、思わず「ブンちゃんだ!」と声を漏らしてしまう。

西沢道夫とは、初代ミスタードラゴンズと呼ばれる往年の名選手であり、その背番号15は、服部受弘の背番号10とともにドラゴンズの永久欠番となっている。まあ、《123 実は永久欠番の選手たちのことをよく知らない》ファンもいまでは多いことだろうから、くわしくは『中日ドラゴンズあるある2』の119ページのコラムを参照していただきたい。

ちなみに西沢のニックネーム「ブンちゃん」は、入団当時にコーチが彼の巨体を見て、当時の人気力士・出羽ヶ嶽文治郎になぞらえ「ブンちゃんみたいだな」と言ったことから命名されたもの。そういえば、ドラゴンズ現役の和田のニックネームは一文字違いの「ベンちゃん」だった。ただ、《072 なぜ和田が「ベンちゃん」なのか、わからない人が増えてきた》のもたしかだろう。NHK出身の演出家の和田勉からとられたものなんですけどねえ(遠い目)。

■8月凸日
AKB48グループのナゴヤドームでのコンサートで、SKE48が来年2月に同球場で単独コンサートを開催すると発表された。地元を拠点とするグループにとって、ナゴヤドームは一つの目標だっただけに、ファンとしても感慨深い。

『中日ドラゴンズあるある2』にも、《212 井上ファンのSKE48須田亜香里はきっといい子に違いない》などいくつかSKEがらみの「あるある」が出てくる。井上とは現在、打撃コーチを務める井上一樹のことだが、そう言いつつ須田さんは今月発売の「ブブカ」の表紙に山本昌と一緒に出ているのですが(笑)。

芸能人・ミュージシャンには、地元出身者だけでなく意外とドラゴンズファンが多いようだ。この本によれば、上田晋也(熊本出身)やサカナクションの山口一郎(北海道出身)もそうだという。しかしなぜ彼らはドラファンになったのか? 著名人でなくとも《036 地元出身じゃないドラゴンズファンと出会ったら、まずファンになった理由を聞きたくなる》。

■8月凹日
イチローが日米通算4000本安打の大記録を達成した。記者会見でその道のりを聞かれ、「きょうの結果がないとあしたがないという毎日を過ごしてきたということだと思う」と謙虚な発言。

『中日ドラゴンズあるある2』には、《038 大言壮語をしないのがドラゴンズ流》として、プロ野球史上初の350セーブを挙げた岩瀬が、次の目標を問われ「351」と答えたという例などがあげられていたけれども、イチローも愛知県人ということを考えると、そういう気質がこの地方の人間にはあるのかなーとふと思ったり。

■8月□日
神宮球場でのスワローズ戦。きのうの同カードは乱打戦となった(バレンティンには50号ホーマーをお見舞いされた)ものの、浅尾〜高橋聡文〜岩瀬の継投で10ー8でドラゴンズが逃げ切った。岩瀬はこれで9年連続30セーブの、自身の持つプロ野球記録を更新。

もっとも、ドラゴンズには《打線爆発の翌日は必ず貧打》というジンクスがあり、きょうはダメかも……と思いきや、3回に和田がソロ、5回にはクラーク、高橋周平、小田と3者連続ホームランが飛び出し、気がつけば11ー7と連日の大勝で、うれしいという以前に、どーしちゃったの!? と思うくらい。

この試合で先発の山本昌が今季5勝目をあげ、自身が先月マークした最年長先発勝利のプロ野球記録を更新(48歳0カ月)したばかりか、2回に打ったタイムリーヒットでセ・リーグ最年長安打記録まで塗り替えた(それまでの記録はチームメイトの山崎が持っていた)。すでに来季も現役続行が確実となり、64年ぶりのプロ野球史上最年長勝利の記録更新も見えてきた。いや、こうなれば来年といわず再来年まで現役を続け、《063 山本昌は50歳まで現役でいてほしい》というのが、ファンの総意だろう。

……と、これだけ見ると、ドラゴンズはいかにも調子よく見えるけれども、先週のナゴヤドームでのタイガース戦では3連敗しているし、スワローズ戦もこの前の2カードは連続負け越し。順位はAクラスとBクラスを行ったり来たりしている。

それでも、8月29日の試合では、延長10回に井端のタイムリーで勝ち越し、その裏に岩瀬に代わりマウンドに立った浅尾がきっちりと抑えた。《013 浅尾の完全復活を心から願っているが、板東英二のまぁまぁ願っている》とは、今シーズンのドラゴンズファンなら誰でも思っていること(板東はともかく)。だからこそこの活躍は光明と思いたい。

シーズンもいよいよ終盤。骨折で5週間の宙返り禁止を命じられているドアラも含め、故障中の選手たちが何とか復調して、ラストスパートを決めてほしいところ。うん、ファンの多くは《060 実はまだ優勝を諦めていない》のだから!

※この記事は日記の形式をとったレビューです。一部記述は正確な時系列に並んでいないことをお断りしておきます。

(近藤正高)