成章vs豊橋中央 成章、終盤に粘りの攻撃をみせるも1点に泣く
圧倒的に名古屋市内の私学勢が強い愛知県ではあるが、県立勢もそれぞれの環境の中で食い下がっている。江戸時代に設立された田原藩の藩校成章館を母体とする成章は創部107年の伝統校。08年春には、小川 泰弘投手（現ヤクルト）を擁して、21世紀枠代表として甲子園にも出場し、開幕戦勝利して、学校としても甲子園初勝利も記録している成章。今年は、先輩の小川投手が“ライアン小川”のニックネームで活躍していることもあり、その勢いをもらいたいところでもあろう。
当時のコーチでもあった成章・河合邦宗監督は、「今の選手に、小川の心臓の一部でもあればいいんですけれどもね」と、苦笑していた。当時の監督だった糟谷寛文総監督も、「今年のチームはそこそこ打てるけれども、小川みたいな柱になる子がおらんから、ごまかしごまかしだわ」と、チーム事情を話してくれた。
豊橋中央は女子バレーボール部は強豪校として全国大会にも進出しているが、野球部は創部10年目の新鋭だ。しかし、東三河勢の私学としては豊川、桜丘などに負けない存在になってきている。
実は、このカードは昨夏の1回戦でも当たっており、この時は豊橋中央が5対2で勝利していた。成章としては、リベンジをしたい相手でもあった。先制したのは成章で初回、盗塁失敗などもあったが、二死二塁から4番大澤君が左中間にライナーの2ランを打ち込んだ。2回に失策絡みで1点返されたが、3回一死から大澤君が安打で出ると、小塚君も続き二死一二塁が佐々木君の中前打で帰してリードを広げた。
しかし、豊橋中央も粘る。3回すぐに丸山君の左翼への2ランで追いついた。そして4回、成章が無死一、二塁、一死二、三塁を逃すと、その裏豊橋中央が2回途中からリリーフしていた渡邊君が二塁打すると、9番松澤君の右前打で帰って逆転した。成章ベンチはここで先発下手投げの眞木君を諦めて2番手の増田君を送り込んだ。豊橋中央は1死満塁から丸山君の右犠飛でさらに1点を追加した。前半を終わって、どちらも三者凡退なしで、3回表と5回裏を除いて毎回先頭打者が出塁しており、試合は乱戦の様相を呈してきた。試合時間も、ここまでで1時間半を要した。
豊橋中央は6回にも丸山君が、またも左翼へ2ランを放って突き放した。さらにこの回、河合侑君のバントヒットと盗塁に福井綾君の右中間二塁打で加点して流れは、完全に豊橋中央に傾いた。
成章は8回に代打八木君の犠飛で1点を返し、9回も1番からの好打順で四死球で無死一二塁、暴投で二三塁として反撃機を迎え、中軸に回り上原君が左中間二塁打して2点を返す。なおも、2死三塁から、糸川君の執念の内野安打で1点差まで迫った。 しかし、最後の打者は難しい当たりの遊飛になって、これを河合侑君が転倒しながら捕球して試合終了。最後まで手に汗握る接戦はこうして幕を閉じだ。
(文=手束 仁)
