７月20日開幕の東アジアカップに、ザックは誰を選ぶのだろう。彼とスタッフは10日と13日のＪリーグまでを視察し、メンバー発表は15日予定となっている。

　もっとも、予備登録は終わっている。最終段階の視察は新たな選手の発掘というよりも、リストアップした選手の状態確認に力点が置かれているだろう。

　韓国、オーストラリア、中国と対戦する東アジアカップは、新戦力を試すのに申し分のない機会だ。そのうえで、新戦力を見極めるポイントは、「ザックが掲げるコンセプトのなかで、何を見せられるか」が大前提になる。チームとしての機能性を担保するためにも、国内組の常連も招集されると考えるのが妥当だ。

　ＧＫは西川（広島）と権田（ＦＣ東京）のふたりに加え、２月のラトビア戦に招集された林（仙台）が３番手に名を連ねるか。３人のＧＫを、１試合ずつ使ってもいい。

　センターバックは伊野波（磐田）と栗原（横浜ＦＭ）のコンビがファーストチョイスで、水本（広島）、岩政（鹿島）、近藤（柏）らが３番手以降になるか。ロンドン世代の鈴木はザックが注目するタレントだが、鼻骨骨折でリーグ再開初戦に出場していない。

　個人的には高橋祥平を推す。東京ヴェルディの下部組織で育ち、今季から大宮へ移籍したこの21歳は、リーグ最少失点の堅守を支えている。対人プレーの強さは本人もセールスポイントにあげるもので、攻撃への関わりもまた魅力的だ。ボールの回転まで計算された中距離のフィードは、シャビ・アロンソを彷彿とさせる。速くて、強くて、上手い。

　高橋とコンビを組む菊地も、１対１は強い。これまで散見したもったいないミスが減り、プレーに安定感が生まれている。彼ら二人をセットで使っても面白い。

　長友、内田、酒井宏、酒井高の海外組が名を連ねてきたサイドバックのキャスティングは、今回のポイントである。駒野（磐田）、森脇（浦和）、槙野（浦和）らの選出が手堅いが、伊野波の右サイドバック起用もザックは考えていると推測する。４バックのスペシャリストが少ない現状で、指揮官がどのような選手を揃えるのは興味深い。

　ボランチには常連の高橋（ＦＣ東京）がいる。チームを組織的に機能させるために必要な選手のひとりだが、十分な出場時間を得られていない彼にとっても、今回は大切なテストとなる。

　その高橋とコンビを組むのは？　ＦＣ東京のチームメイトである米本、ユーティリティ性の高い阿部（浦和）、ロンドン五輪代表の山口（Ｃ大阪）、柴崎（鹿島）らとの競争から、僕は扇原を選ぶ。

「スパーン」という擬音が似合うタテパスは、日本代表でも攻撃のスイッチとなりうる。レフティーとしての存在価値も高い。センターバックでもプレーできる彼がいれば、試合中の戦術変更もスムーズになる。東アジアカップで、もっとも試してほしい選手だ。

　２列目は中村憲（川崎Ｆ）を軸に編成されるだろうか。実際に腕章を託されるかどうかはともかく、ピッチの内外でチームリーダーの役割を果たしていくはずだ。

　両サイドの人材には柿谷（Ｃ大阪）、工藤（柏）、原口（浦和）、山田大（磐田）らをリストアップしたい。６月のＷ杯最終予選では東（ＦＣ東京）が招集されているが、仕掛けの迫力と所属クラブでの結果を加味すると、ここで名前をあげた４人が先行する。緊張感が伴う大会初戦はともかく、２戦目以降は中村憲抜きで２列目を編成してもいい。

　チームとしての成熟は見込めないだけに、東アジアカップではパスワークによる突破ではなく「個」の力強さを見たい。その意味で、柿谷や原口に期待したいし、大久保（川崎Ｆ）もリストアップされていい。14節終了時でリーグトップのゴールをあげている好調さはもちろん、スコアや時間帯に応じて緩急を使い分けたプレーは際立つ。

　１トップは前田（磐田）を軸に、豊田（鳥栖）、佐藤寿（広島）、渡邉（ＦＣ東京）の３人を招集してほしい。それぞれにタイプは異なるが、だからこそ試す価値がある。

　８月以降は海外組が招集可能となる。新戦力を数多くテストできる機会として、東アジアカップは最初で最後の機会だ。予想を裏切るような思い切った抜擢があっていいし、招集した選手は漏れなく起用するべきである。東アジアカップを活気ある大会とすることは、海外組に刺激を与えることにもなることを、ザックには忘れてほしくない。