２０１３年最初の国際試合となる６日のラトビア戦のメンバーは、海外組15人、国内組８人というバランスとなった。昨年11月のオマーン戦に招集された国内組では、ＧＫ西川、ＤＦ栗原、駒野、ＭＦ中村憲の４人が外れている。

　メンバー発表にあたって、ザックは「インシーズンの選手を優先した」と話している。２月１日に一斉にキャンプインするプロ野球とは違って、Ｊリーグはスケジュールにバラつきがある。練習試合をしているチームも少ないだけに、実戦可能なコンディションに仕上がっていない選手がほとんどだ。海外組重心の選考はそのためである。

　ラトビア戦の位置づけについて、ザックは「コンセプトの再共有」をあげた。「代表から漏れたわけではない」という前提で指揮官が名前をあげた栗原、駒野、中村憲らについては、すでにコンセプトを理解できているという認識も含まれているのだろう。ＧＫ西川については、クラブＷ杯で負ったケガも選考漏れの理由となっているはずだ。

　ラトビア戦以降のチーム編成に踏み込むと、難しい立場の国内組がいないわけではない。

　たとえば、駒野である。
　オマーン戦を欠場した内田が復帰したことで、サイドバックは右に内田と酒井宏、左に長友と酒井高の４人が招集されている。長友と酒井高は右サイドでもプレーでき、中盤のアウトサイドにも対応する。これまで駒野が担ってきた役割は、酒井高がそのまま引き継げるわけだ。二人の酒井が所属クラブで実績を積み上げていくと、駒野の存在価値が薄れてしまう。南アフリカＷ杯で名をなげたベテランは、勝負どころを迎えている。

　オマーン戦に招集された海外組では、宇佐美がリストからこぼれ、香川が復帰を果たした。さらに加えて、大津が初招集されている。

　ロンドン五輪で鮮烈なインパクトを記した大津は、所属するＶＶＶフェンロで出場機会を増やしている。「以前も呼びたいと思ったことがある」と話すザックからすれば、「実際に手元でチェックする」のに申し分のないタイミングと言える。

　昨年２月のフィンランド戦では、磯村（名古屋）、柴崎（鹿島）、久保（京都）らが招集された。金園（磐田）も当初はリストアップされていた。

　将来性を考慮した“育成枠”は、今回は採用されていない。３月のヨルダン戦を踏まえて「コンセプトの再共有」が掲げられ、ラトビア戦がフレンドリーマッチのためである。チームの集合は二日前で、前日にしか合流できない海外組もいる。新戦力にチームコンセプトを教え込む時間的猶予はない。

　新戦力のテストは、６月のコンフェデレーションズカップ以降となるだろう。３月のヨルダン戦でＷ杯の出場権をつかみ、コンフェデ杯で世界のトップ・オブ・トップと真剣勝負をするのが、今シーズン上半期に想定されるスケジュールだ。コンフェデ杯に万全の状態で挑むためにも、既存のメンバーでチームを仕上げていくことが優先される。

　その後はどうだろうか。先の会見でザックは、「Ｊリーグでいい活躍をしてくれている選手は何人もいる」と話している。会見上では扇原、山口（いずれもＣ大阪）、鈴木（柏）のロンドン五輪代表に加え、鹿島で定位置をつかんだ柴崎の名前をあげた。

　国内組で昨年招集された選手には、岩政（鹿島）、近藤、田中、谷口（いずれも柏）、森脇、槙野、阿部、柏木、原口（いずれも浦和）、石川、徳永、長谷川（ＦＣ東京）、大久保（川崎Ｆ）、藤本（名古屋）、佐藤寿（広島）、増田（蔚山現代／韓国）、それに磯村、柴崎、久保、金園がいる。

　彼らの年齢とプレースタイルに代表のチームバランスを考えると、柴崎が注目株だろう。中盤の複数ポジションをこなせる彼は、中村憲の後継者という位置づけに当てはまる。

　扇原もチームに加わってきそうだ。このところ定位置としているボランチだけでなく、彼はセンターバックでもプレーできる。しかも、代表チームでは稀少なレフティだ。攻撃のスイッチ役となり、崩しのパスも出せる個性は、細貝や高橋と異なる。ボランチとセンターバックの層を厚くするタレントとして、早い段階で招集されるのではないか。

　個人的には、ドリブラーの台頭を望む。原口（浦和）や宮市亮には、所属クラブでザックを納得させる活躍を見せてほしい。　

　森本と李の復権も。ラトビア戦に大津が招集されたのは、１トップの人材が心もとないからでもある。代表復帰の待望論が消えないうちに、彼らは存在感を示さなければならない。