/電子書籍は、紙媒体と違って、平面的なレイアウト設定がすべてキャンセルされる。これは、表示デフォルトが確立されていないからではなく、電子書籍リーダーが音声読み上げ機へと向かっているからである。/

電子出版をやってみた。アマゾンのダイレクト出版だ。作業そのものは簡単なのだが、仕組みやクセを理解するのに手間取った。そこには、新しい出版思想が見える。この問題をきちんと理解しないと、著者も、出版社も、紙媒体からの転回は難しいだろう。

 最初に驚くのは、本なのに、平面ページの概念がまったく無い。単純な文字列の線形データしか受け付けない。そのうえ、出版側では、そのレイアウトさえできない。ただ絵巻物のように、文字がずるずると横につらなっていく。これはアマゾンの独自仕様で、文字サイズなどを読者側が自由に操作することの方を優先しているため。基本は、e-pub の仕様やHTMLのタグなのだが、あえてマージンやパディング、スペーシングがすべてキャンセルされる。つまり、そういう設定を書き込んでも、完全に無視される。行間などは、キンドルのデフォルトの設定になる。フォントも、基本はキンドルのデフォルトの明朝とゴシックのみ。

 もちろんマンガや図表のようなフィックス・レイアウトのものを表示できないわけではないのだが、これをやると、いきなりデータ量がでかくなる。ところが、販売手数料設定がデータ従量制になっている部分があり、そうでなくても価格設定に制限がかかる。一言でいって、販売促進のための表紙以外は、画像は歓迎しない、というのがアマゾンのポリシーのようだ。一応、画角としては、自社製のキンドルを基準に、10:6という奇妙なものを推奨している。しかし、すでにi-padやi-phoneなどの他社製リーダーにも提供していることもあり、またそれぞれに画素数も違い、この推奨アスペクトでうまく表示されるとはかぎらない。

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