２０１２年の日本代表は、14試合を戦って８勝２分２敗の成績を残した。負けた２試合の相手はどこだったか？
　
　10月のブラジル戦は、すぐに思い出せるはずだ。もうひとつは？　２月のウズベキスタン戦である。ブラジル・ワールドカップ３次予選の最終戦だ。
　
　２月29日のウズベキスタン戦に向けて、チームは５日前の24日にテストマッチを消化した。対戦相手はアイスランドである。ザックことアルベルト・ザッケローニ監督は、「選手のフィジカルコンディションを上げ、試合感を取り戻させること」を第一義とし、「新たに招集した選手を見極めること」もポイントとした。国内組しか招集できない事情から、ザックは柴崎（鹿島）のような若手から大久保（神戸）、石川直（ＦＣ東京）といったベテランまで幅広く招集していた。
　
　試合は３対１で日本が勝利をつかむが、Ｊリーグ開幕前にありがちなテストマッチである。コンディションの整わない日本はどこか手探りで、アイスランドは日本と歩調を合わせるように動きが鈍い。寒さが身に沁みる一戦だった。
　
　ザックの目的も達成されたとは言い難い。「フィジカルコンディションを上げる必要のある選手」とは、５日後のスタメン出場が予想される今野、遠藤、前田を指すが、わずか１試合でフィジカルを仕上げるのは現実的に不可能だ。
　
　また、ウズベキスタン戦は選手の拘束期間が短いフレンドリーマッチのため、海外組は試合前日にならないと揃わない。29日へ向けたテストマッチという位置づけではあるものの、アイスランド戦とウズベキスタン戦に実質的なつながりはなかった。

　果たして、ウズベキスタン戦は低調なパフォーマンスに終始する。22分に岡崎がつかんだチャンスが得点に結びついていれば──クロスバーに嫌われてしまった──試合の行方はまったく違うものになっていただろう。しかし、いくつかの好機を生かせないままハーフタイムを迎え、後半開始直後の54分に先制点を許してしまう。ザックは乾、李忠成と交代のカードを切っていくが、前がかりになったことでウズベキスタンにも好機を与えてしまう。
　
　長友のケガで３枚目のカードが駒野になったのは誤算だったとしても、シュート数は６対10である。「負けたときは相手を称賛することを忘れてはならない」とザックは語ったが、言い訳のできない敗戦だった。ウズベキスタンがジェパロフ、アフメドフ、ゲインリヒらの主力を欠いていたことも、試合後のブーイングにつながっていたはずだ。

　全日程を終了した３次予選は、３勝１分２敗の勝点10にとどまり、ウズベキスタンに首位を譲った。総得点14のうち12点は、草刈り場のタジキスタンから奪ったものである。アジアカップ王者の強さを、見せつけることはできなかった。

　前年11月の北朝鮮戦に続く黒星には、「アジアは簡単じゃないことが分かるし、危機感が自然と出てこないと困る」と、キャプテン長谷部は苦言を呈した。続けて彼は、「結果だけを見るとネガティブになってしまうかもしれないけれど、前向きにやっていくことも大事。負けたけれど悪いことばかりじゃないし、もちろん問題点も見つかったし、良い面と悪い面がある」と話した。

　所属するドルトムントと同じトップ下で先発した香川は、「クラブと代表はまったくの別物。代表で90分間トップ下をやったことをいい経験にしたい」と悔しさをにじませた。

　３次予選では３試合目の先発出場となったハーフナー・マイクも、「合流してからの時間が短かったので、連携がうまくいかなかった」と呟くように話した。

　後半途中から出場した乾も、インパクトを残せずに終了のホイッスルを聞く。10年９月７日以来の国際Ａマッチに気持ちを昂らせていたが、「もっと精度を上げないと」と反省の言葉を並べた。

「最終予選の開幕まで、あと３か月ある。フィジカルの強さを武器としたチームが多いので、我々もその点についてはきっちり準備をしたい」とザックは話したが、３月、４月は国際Ａマッチデイが組まれていない。「海外組は試合をやりながらコンディションを整えていってもらいたい」と各選手の奮起を促しつつも、指揮官はこの時点である決断を下していた。

（第２回へ続く）