10分間のショートフィルムで監督デビューを果たした中尾明慶

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 テレビドラマ「3年B組金八先生 (第6シリーズ)」「ROOKIES ルーキーズ」などで活躍してきた俳優・中尾明慶が、10分間のショートフィルム『3G』で監督デビューを果たした。YouTubeでの一般公開を前に、中尾が俳優業での挫折と葛藤、そして監督業への熱い思いを語った。

 『3G』は、女の子にモテたいと願う青年が、携帯に届くメッセージに従い、女の子の理想の男性像を演じてみるが……という中尾らしい一本。中尾は、監督挑戦の動機について、「僕の中の最終目標は、お芝居もできて、バラエティーもできて、映画やドラマも作れること。尊敬しているのは、北野武さんです。『バカヤロー、コノヤロー』で、恐怖を与えることも、笑いを取ることもできて、自分の世界を確立している。僕も世界を作りたいタイプの人間なんです」と語る。

 そして、そう思うようになった背景に、意外にも俳優としての葛藤、挫折があったことを明かす。10代の頃から俳優として活躍し、バラエティー番組などにも出演してきたが、「お芝居ももちろん楽しいんですけど、役者は誰かのメッセージをご覧いただく方にわかりやすく伝えるのが仕事。正直、共感できないこともあるんです。役者として行き詰まりを感じることもあるし、だったらもっと広い視野を持って、自分が伝えたいことをいろいろな形で発信できたらいいなと思うようになりました」と明るく元気なイメージからは想像もつかない思いを抱えていたことを明かした。

 中尾が20歳頃から漠然と監督をやってみたいと思い始めて4年。自ら脚本を書き、「これは挑戦なので、周りも挑戦者で固めたかった」との考えから、あえて俳優仲間の手は借りず、友人や専門学校生たちの協力を得て本作を撮影。編集にも立ち会い、10分間のショートフィルムを完成させた。「すごく難しかったけど、いい勉強でした。とにかく楽しかったです。脚本を書いてみて、生みの苦しさも知ったし、セリフを大切にしないといけないと思いました。演出するときには役者としての強みも感じたし、俳優業の方も頑張らないといけないと思いました」。

 また、手元には伝えたいメッセージを書きつづったメモが何冊もあるということも明かした中尾。「今回は割とポップな感じだったので、次はもっとリアルなものを。人間の繊細さを感じさせるような、感情があらわになるシーンも撮りたいですね」と次回作、次々回作の構想も頭の中にあるという。憧れの北野武監督になぞらえ、「一歩一歩前進して、中野区の中尾から、いつかは世界のナカオになれたらいいなと思います」と語る目は、真剣そのものだった。俳優として、監督として、新たなステップを踏み出した中尾のこれからに期待したい。(写真・文:小島弥央)

中尾明慶監督デビュー作『3G』はYouTubeにて公開中
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