ストレスフルな社会にあって、ほんとうに元気になるために必要なことは何か───それは「決意」すること。

 NHK教育テレビ『100分de名著』が、この8月、ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』を取り上げた。その影響は大きなもので、あのような重苦しい作品が、すっとベストセラーにランクインした。日本人の読書欲もまんざら軟弱ではないなと思える一方、それだけ生きることへの漂流感が強くなっているのかもしれない。

 フランクルは、私も研修プログラムの中で頻繁に引用する人物で、「生きる意味」「意味が人間に与える力」を語らせれば、彼以上に説得力を持つ人はいない。なぜなら、第二次世界大戦下、あのドイツの強制収容所から奇跡的に生還したユダヤ人学者だからだ。あの絶望するしかない状況の中で、フランクルは生きる意味を自分に問いかけ、周囲に問いかけ、生き続ける意志を貫いた。

 フランクルの言葉を一つ引用しよう。

  「人間にとって第一に必要なものは平衡あるいは生物学でいう『ホメオスタシス』、つまり緊張のない状態であるという仮定は、精神衛生上の誤った、危険な考え方だと思います。人間が本当に必要としているものは緊張のない状態ではなく、彼にふさわしい目標のために努力し苦闘することなのです」。 (『意味による癒し−ロゴセラピー入門−』より)

 精神科医フランクルがたどり着いた結論は、人間の幸福はなにも緊張がない穏やかな状態に身を浸すことではなく、意味に向かって奮闘している状態だということである。こうした行動主義的幸福観は、他の偉人賢人の考えとも共鳴する。

  「われわれが不幸または自分の誤りによって陥る心の悩みを、知性は全く癒すことができない。理性もほとんどできない。これにひきかえ、固い決意の活動は一切を癒すことができる」。 ───ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』

続きはこちら