9月14日、次期総選挙の自民党の「顔」を決める総裁選が告示された。立候補したのは石原伸晃幹事長(55)、安倍晋三元首相(57)、石破茂前政調会長(55)、町村信孝元官房長官(67)、林芳正政調会長代理(51)の5氏。自民党中堅議員の秘書、M氏の分析はこうだ。

「総選挙で自民党が単独で過半数を獲得できると考えている議員は少ない。必ず公明党プラスどこかの党と連立を組むことになる。石原さんが勝てば、谷垣体制下の幹事長として民主党と公明党との“3党合意”を決めたのですから、民主党と組むことになる可能性が高い。中堅と若手議員の多くは、それを嫌がっています。民主党よりも維新と組むべしと考える人は、安倍さん支持。さらに維新も安倍さんも、紛争化している領土問題では攻撃的な姿勢ですから、保守強硬派の受け皿にもなっています」

また、石破氏は、民主党であっても政策が合う連中が離党して新勢力をつくれば組めるという政界再編論者。政策の擦り合わせさえできれば維新とも組めるとの柔軟な考えを持っている。

町村氏は「謙虚さのない人柄なので、地方からも若手からも人気がない」(某県連幹部S氏)、林氏は総理になった前例のない参議院議員で知名度も人気もないため、次期総裁の可能性があるのは石原氏、安倍氏、石破氏の3名と見られる。誰が当選してもおかしくないが、その行方を握っているのは小泉純一郎元首相の次男、小泉進次郎議員だという。その理由のひとつが、地方での人気の断トツの高さだ。

「彼は3年前の初当選から2ヵ月後に、遊説局長代理に就任しました。そして積極的な全国行脚を行ない、各地で見事な演説をして党員や党友たちの心をつかんでいます。遊説局長代理というのは、“代理”とついていますが要職です。1年生議員の就任は異例中の異例。しかもベテラン議員よりもはるかに魅力的な話術や気遣いを見せるものだから、遊説局長にって打診もあった。でも進次郎さんから断ったんですよ」(別の県連幹部T氏)

人気者にも関わらず、マスコミに擦り寄らない点も好印象のようだ。

「マスコミへの露出を意識して抑えている。若者らしい身の丈をわきまえた奥ゆかしさを持ち、おまけに爽やか。年配者の多い地方党員から人気が出るのは当然の話です」(T氏)

また、彼は昨年、さらなる要職である青年局の局長にも就任している。

「青年局とは、45歳以下の国会議員、地方議員、党員ら全員を束ねる組織。その局長を31歳の男がやっている。これは執行部からの信頼も絶大である証拠。礼儀も正しいから党の長老たちからも孫のようにかわいがられていますよ。もし進次郎氏が“総裁選では誰々を支持する”と表明すれば、地方票はもちろん、長老たちに気を使う勢力も雪崩を打ったように同調するのは確実です」(T氏)

今の情勢では、自民党の新総裁が次の総理大臣になる可能性が高い。となると、31歳の1年生議員が、次の総理を決める事実上の“キングメーカー”ということになる。

「確かにそうなんですが、進次郎さんは誰を支持するかを事前に表明しない可能性もあります。ご自身の発言がどれだけ大きな影響力を持つかを自覚しているからです。そこがまた、政治好きな地方の党員や党友の心をワシづかみにするんですよ」(前出・S氏)

自民党総裁選のスケジュールは、議員投票が26日に投開票。地方票は25日までに党本部必着だ。もし22日くらいまでに小泉進次郎氏が誰かへの支持を表明すれば、その候補者が次期総理大臣になる可能性が高い。果たして、この戦いに勝つのは誰だろうか。

(取材・文/菅沼 慶)