大学生相手の練習試合より、国際Ａマッチのほうがもちろんいい。相手のレベルはともかく、勝利は何かしらのプラス材料をもたらしてくれる。ただ、フレンドリーマッチと公式戦は、当然ながら似て非なるものである。

　旧西ドイツ代表のベルティ・フォクツ率いるアゼルバイジャンは、最新のＦＩＦＡランキングが１０９位である。それでも、弱小チームではなかった。

　身体能力に恵まれた選手が多く、局面での攻防は激しい。カウンターに活路を見出すスタイルは、来るべき最終予選で迎え撃つオマーン、ヨルダンのシミュレーションとして打ってつけだった。

　だが、ゲームそのもののクオリティは決して高くなかった。この試合のインプレー時間は、53分13秒である。アウトオブプレー時間は、41分30秒にもなる。ワールドカップなどでは70分を超えることも珍しくないだけに、非常に物足りない数字だ。
アゼルバイジャンの選手が何度もピッチに倒れ──本当に何度も、何度も！──そのたびに時計が止まったことが主因だが、ゲームが止まれば選手はひと呼吸できる。多少なりとも疲労がやわらぎ、リフレッシュしてプレーを再開できる。水分も補給できる。チームメイトと修正点を話し合うこともできる。公式戦とは明らかに異なる状況が、どんどんと生まれていってしまうのだ。

　ちなみに、２月29日に行なわれたウズベキスタンのインプレー時間は、59分03秒だった。これだって、決して長くはない。アゼルバイジャン戦は、さらに６分近くも短いのである。ピッチ上で感じる疲労度や重圧は、最終予選と明らかにかけ離れていた、と考えるのが妥当だ。

　もちろん、無意味な試合だったと言うつもりはない。ザックが繰り返していたように、アゼルバイジャン戦は海外組に試合感覚を取り戻してもらうことが目的だった。昨年８月以来の代表復帰となる本田はもちろん、長谷部を本来のボランチで起用することができたのも、最終予選へ向けた重要なステップである。「右サイドは久しぶり」と話した岡崎にとっても、大切な助走となった。

　そのうえで、新戦力のテストもできた。宮市、酒井、高橋らがデビューを飾っただけでなく、細貝、栗原、伊野波らにも実戦を積ませることができたのは、今後へつながっていくだろう。

　球際の攻防が激しい中東勢との一戦では、ボールを奪い取る力を持ったプレーヤーが必要になってくる。ダブルボランチの一角としてハードワークした細貝は、ゲームを締めくくる交代要員として出場機会が増えてくるのではないか。

　３次予選を連敗で終え、ここ３試合連続で失点を喫していたチームにとって、２対０の勝利は間違いなく良薬となる。だが、６月３日の埼玉スタジアムのピッチは、５月24日のエコパとはまったく違う雰囲気に包まれる。

　最終予選は決して簡単なものでなく、初戦はとりわけ難しい。０対０や０対１でゲームが推移していけば、ホームのメリットはすぐに重圧へ変わってしまう。チームとしていかに緊張感を高め、一体感を増していけるか。アゼルバイジャン戦は、最終予選へ向けた準備の第一歩に過ぎない。