ニュースを売る連中は、記事を飾るために、センセーショナルな有名人の言葉を必要としている。だから、彼らは、最初から人の「話」を聞く気などなく、言葉のシッポだけ切り出して筋肉反射する。

 前農水大臣が反対集会で推進を表明! なんていう記事は、ニュースヴァリューがある。えっ、あの人が推進? と思わせれば、週刊誌は売れ、ネットのヴューも増える。で、実際に本文を読むと、反対運動の推進だったりする。でも、冒頭の見出しはウソじゃない。読むヤツがかってに誤解しただけだ。いや、わざと誤解するように作っている。

 記者本人が何を言っても、誰も関心を持たない。だから、売れるニュースを作るために、連中は、人々の注目を浴びている有名人にぶら下がる。そして、その人が言わなそうなこと、言ってはいけないことを言わせようと、誘い水を撒く。文脈なんか、知ったことじゃない。とにかくその言葉を発したという事実さえあれば、ウソにはならない。

 新聞記者は帰ってくれ!と怒った政治家がいた。左翼がかった連中が、この手の言葉の切り抜きをやったからだ。しかし、いまや、作為的な映像編集をやるテレビでも事情は同じだろう。ふつう、話は、前置きから始まって、その前置きを踏まえて、その後の言葉の意味が決まり、積み重なっていく。それが話というものだ。たとえば「まったく犬はイヤだね」という言葉も、何にでも鼻を突っ込む同僚の悪口を言い合っていた文脈では、ふつうとはまったく別の意味を持つ。そこだけ切り抜いたら、意味が変わってしまう。


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