10月26日、政府税制調査会は平成24年度の税制改正に向けた議論をスタートさせた。「増税やむ無し」を掲げる野田政権の狙いについて、ある経済アナリストはこう解説する。

「野田首相肝いりの政府税調がこの9月にまとめた増税案では、所得税の10%の定率増税(収入額にかかわらず一律で課す。5年間の時限式)と消費税 5%アップが浮上しています。まずは、東日本大震災の復興費用約13兆円を所得税を中心とした臨時増税でひねり出し、その後、国の財政健全化のための歳入アップの手段として、10年代半ばまでに消費税を段階的に10%に引き上げるとのソロバン勘定を弾いているのです」

 しかも、この2つの増税案は、復興増税の導入の遅れを穴埋めするために、2013年度には実施されそうな見通しだという。

「もし所得税の10%定率増税と、当面引き上げが検討されている消費税5%アップがセットで実施されてしまった場合、夫婦と子供ふたりの標準世帯(年収700万円)で年間約12万円の増税になる計算です」(アナリスト)

 こうした増税は、1000兆円を超える日本の債務残高、つまり借金の返済のためには絶対必要だと野田政権は訴える。だが、ジャーナリストの武田知弘氏はこう疑問を投げかける。

「そもそも1000兆円の借金をつくったのは誰なんでしょう? アメリカの要求に屈して90年代、630兆円もの巨費をムダな公共投資に投じた国そのものです。しかも、国はこれだけのお金を使いながら景気を回復できず、貧富の差を拡大させてしまった。今回の大増税はその責任を取らず、国民に押し付けているにすぎない。『増税をしないと国が破綻する』という、国・財務省の洗脳にだまされていはいけません」

 確かに、1997年に消費税が3%から5%にアップされた結果、国の歳入は増えた。だが一方、消費税増税は消費者の節約を招き、企業の売り上げが伸びずに法人税が減収になるという結果をもたらしてしまった。所得税に関しても、収入を問わず一律に上げても国民の消費意欲をそぐだけにしかならない可能性は高い。

 景気対策にもならず、ただ単に国の借金を補うだけのW(ダブル)増税。「増税をしないと国が破綻する」という言葉は、国や官僚による根拠が薄い脅しにすぎない。

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