前原誠司氏

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  民主党代表選挙の候補者の共同記者会見が2011年8月27日午後、日本記者クラブ主催で行なわれた。同日午前に立候補を届け出た、前原誠司前外相、馬淵澄夫前国交相、海江田万里経産相、野田佳彦財務相、鹿野道彦農水相の5名は、東日本大震災の被災地の復興・復旧や福島第1原発事故への対応、マニフェスト見直しなど政府・与党での重要な論点について、考えを述べた。

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 以下、共同記者会見での各候補者の発言要旨。(届出順)

■前原誠司氏の発言要旨

<震災復興>

 1つは復興構想会議での考え方、各自治体が提案する基本計画を迅速に実行し、景気対策を含めた第三次補正予算。2つ目は民間資金の活用。例えば公設民営方式を仙台空港でやる。3点目として被災地のインフラづくりを「広域連合」で行い、新たな自治、将来の日本の地域自立のあり方を示す。

<原発対策>

 工程表を進め、被害者への賠償を着実に。責任を持って廃炉にする。除染し精査する中で機動的な対応、見直しがあってもいい。新たな原発は作らないが、安全性を高め再稼働していく。今後の日本のあり方を考え、例えば「エネルギー電力臨調」を作って議論。国鉄改革、電電公社改革に匹敵する国家事業に。

<増税>

 「社会保障と税の一体改革」を進める。復興財源については今、機械的に増税を考えるとデフレを深刻化させる。1つはPPP/PFIなど民間のお金をどのように活用するか。2点目は深堀りできていない特別会計の見直し。3点目は景気の動向を見ながら復興債の発行。景気回復したときは増税を考える。

<マニフェスト>

 われわれはもう少し自信を持たないといけない。政権交代でできたことはたくさんある。急速な少子高齢化社会の中での、子ども手当て。食糧自給率低下、農業従事者高齢化の中での農家への個別所得補償。その方向性・理念を大切にし、中身は柔軟に見直し、現実にあったものに進化させていくことが大事。

<大連立>

 大連立を呼びかける。テーマは震災復興と原発対応。また「社会保障と税の一体改革」は与野党超えて共有すべき。同時に、一票の格差問題など選挙制度改革などを時限で呼びかける。相手が乗ってこない場合は衆参ねじれているので、政策ごとに丁寧な協議を行うメカニズム、信頼と協力を頂く状況を作る。

<小沢一郎氏について>

 党員資格停止の問題について、明確に現執行部の考え方を尊重すべきと言っているのは私だけ。状況の変更がなければ踏襲するのは当たり前。同時に政治は結果責任。党内がまとまっていないと結果が出せない。すべての方の力を借りて活かしていく。適材適所で優秀な方々を、グループ関係なく使っていく。

<揮毫(きごう=毛筆で文字をかくこと)>

 至誠天に通ず

■馬淵澄夫氏の発言要旨

<震災復興>

 国が率先して行うプロジェクトを東北の特区の中で進めていく。復興庁の権限の強化、独自財源を持った仕組みが求められていると思う。自治体が作っている復興計画には状況によって差が出ているが、それによってまだらな復興計画を同じレベルに合わせる。

<原発対策>

 原発事故対応の補佐官として取り組んできた。サイト内の汚染拡大をまずとめる。サイト外の土壌汚染防止については将来的に土壌の処分地をどうするかということもあわせて国民に知らしめる。政策は脱原発依存。エネルギーの選択肢を狭めることなく、制御技術を作り上げることに取り組む。

<増税>

 増税、消費税率引き上げを今やるべきではないが、将来において景気回復局面に入れば、行うことも十分に考えられる。復興は複数の世代で使う街づくりを行うもの。復興財源について明示せよというのは、短期間で償還する前提の国債発行になっているから。「60年償還ルール」という位置づけであれば問題ない。

<マニフェスト>

 今日まだ十分ではないという批判には真摯に反省すべき。ただ震災、原発事故と外的要因や内的要因が大きく変化した。理念を掲げながらも、しっかり現実対応することが求められる。マニフェストで何を優先すべきかが問われている。マニフェストは一言一句に縛られるものではない。

<大連立>

 政権の枠組みは現状維持する。「大連立ありき」でない。個別の政策については与野党が立法府で議論する。ねじれ国会は憲法で認められた仕組みで、民主党が野党の時代にもあった。建設的な議論をすることが重要であると経験している。協議のなかで、一部的な連合も含めて議論する。

<小沢一郎氏について>

 私はグループ・派閥に属しない。ひとりでここまできた。現時点でもグループの取り込みがあるだろうが、民主党はそういった締め付けを断ち切って、国民の代表たる国会議員が自立的な選択をできる、その姿を見せようという政党だと信じている。当選3回の私のような者が代表選に出られたこと自体が大きな一歩。

<揮毫>

 不易流行

■海江田万里氏の発言要旨

<震災復興>

 福島第一原発の原子炉の安定、周辺地域の除染とスピードアップ。そして被災地全体の復旧復興のためのインフラ整備。各自治体の計画を尊重し、国がお金をつけていく。財源は増税に頼ってはいけない。住民本位のためのインフラを作る。次の世代の財産になる。国債で構わない。無利子国債も一つの考え方。

<原発対策>

 工程表を精査し、1日も早くも炉を冷温停止状況にもっていく。また福島県民の方々の健康診断も前倒しして、子どもたちや母親の健康不安をなくすように行っていく。原発に関しては、特に高経年化の不安がある。ストレステストの中で、高経年との相関関係が出てくると思う。そうした原発は廃炉にしていく。

<増税>

 復旧復興の財源は、国債で構わない。命を守るためのインフラ整備には、思い切ってお金を使うべき。そうすれば国債発行の償還の財源も出てくる。財政が前に出て、国民の生活、命に密接に関係するところにお金を使う。税収が上がって十分負担できる。社会保障はタイミングが大事だが消費税増税やむなし。

<マニフェスト>

 マニフェストの問題は2つ。国民に対しての政治姿勢とその内容。大きな政治不信につながるので、政治姿勢としてのマニフェストは守るべき。中身については、状況の変化がある。達成できないものがあるのも確か。その理由、守っていくのか諦めるのかを、はっきりさせる必要がある。毎年見直すことが大切。

<大連立>

 今出ている大連立の話は党内でしっかり議論されていない。党内の議論を尽くさないといけない。政府は政府としての案を出していく。例えば再生エネルギーの買取法案は、政府の案が野党との協議の中で強化された。足元で解決すべき問題については国会機能が果たされている。今後も引き続きやっていく。

<小沢一郎氏について>

 支持をお願いし、支持してくれたのは事実。小沢さんを慕う人はたくさんいる。その人たちの力を借りたいのも当然。一昨年の夏の厳しい選挙を一緒に戦った同志だ。今の大変厳しい日本の状況を克服するために、小沢さんの力がどうしても必要だと思った。あらゆる方々の力、小沢さんを含めた力を借りたい。

<揮毫>

 欲窮千里目、更上一層楼

■野田佳彦氏の発言要旨

<震災復興>

 第1次、第2次補正予算でがれきの処理や仮設住宅のなど復旧対策は講じてきた。次は第3次補正予算を作りあげることが本格的な復興の第一歩。特区や使い勝手のいい一括交付金を活かすべき。なかでも特区には企業を誘致して、雇用を作る道具として活かす。

<原発対策>

 子供や妊婦の健康管理「チルドレンファースト」を進める。除染については、第1次、第2次補正予算である程度手当てしているが、さらに2200億円予備費を使って対応する。福島第1原発については安定的な冷却、廃炉に向けて国がイニシアチブをとっていく。福島の再生なくして日本の再生はない。

<増税>

 復興のための国債は償還の道筋を明らかすることになっている。与野党合意によるものなので、そこから逸脱できない。税制に頼らないところでどこまで確保できるか。あとは時限的な税制措置をとらざるを得ない。どの基幹税がいいか、どの年度から始めるのかは税調で検討し、新しい体制に提示する。

<マニフェスト>

 民主党の目指していた政治は、中間層の厚みが薄くなってきたので、それを増していこうというもの。その基本的な考え方は間違っていないし、堅持している。リーマンショックによる税収の落ち込みやねじれ国会、大震災が起こったという事情もあるので、万全でないものについては国民に説明すべき。

<大連立>

 国民新党と連立していることを忘れてはいけない。「郵政三法案の成立を期す」という合意事項があるので、しっかり実現する。与野党が互いの立場を乗り越えて合意形成できる国会になってきたので、これを加速させる。小異を捨てて大同につくのではなく、小異を残して大同を残すのが民主主義。

<小沢一郎氏について>

 日本の総理大臣は国民が直接選べない。与党議員がまとまって行動したときに決まる。ということは、与党をまとめることが総理大臣の最初で最大の責務。反○○さんとか親○○さんと色分けをした選挙をしていてはその体制ができない。了見の狭い政治はやめたほうがよい。内輪もめをしては与党になれない。

<揮毫>

 素志貫徹

■鹿野道彦氏の発言要旨

<震災復興>

 農林水産省が出した「復興マスタープラン」を活用しながら取り組む。第三次補正予算は、相当思い切った補正を。そのための財源は公共事業が中心だろうから、建設国債も一つの考え方。そして「復興庁」を一刻も早く作り、一元的に復興に取り組んでいく。その際は「(復興)基金」という考え方で作る。

<原発対策>

 放射性物質の飛散などを食い止め、学校保育所、農地林地道路などの生活圏を徹底的に除染。国の責任でやる。原発新設はできる状況ではない。再稼働はしっかり安全点検を行い、信頼される情報を地域に提示し理解を求めていく。省エネ、再生可能エネルギーを広げる中でも、安定した電力供給をやっていく。

<増税>

 増税は経済好転が条件。理屈では必要だが、今日の状況では否定的な考え方に立たざるを得ない。最優先とされる復興財源は三次補正、建設国債でやる。復興庁が設置された段階での財源は、復興債を発行。場合によっては日銀が引き受ける選択もある。政治が責任を持って財源をきちっとやると宣言していく。

<マニフェスト>

 「国民生活第一」という民主党の基本的な考え方は、捨てるわけにはいかない。大震災、原発事故、経済情勢などの変化の中で、状況も変わってきた。マニフェストも、できるものとできないものがあることを国民に示さなければいけない。次の総選挙で新たな基本理念に立ったマニフェストを打ち出していく。

<大連立>

 復興のための三次補正、来年度予算など国会の大事な使命が待っている。政権党として、野党に対して誠心誠意を持って事に当たっていく。枠組みのあり方ではなく、どういう形であるなら協力体制ができるか、率直な話し合いを。民主党は野党に対して、責任を持った話し合いができる体制を作ることが大事。

<小沢一郎氏について>

 小沢元代表には会った。だが、(支持者から)「代表選挙に出てはどうか」と要請されたので、代表経験者や総理経験者、いろんな方々のご意見を聞くことの一つとして訪ねた。そこでご意見をいただいたから、立候補する前に報告を行った。

<揮毫>

 守道有天知

(土井大輔、岩本義和、山下真史、松本圭司)

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