海外の高級ブランドが国内店舗を次々と閉鎖している。シャネルが九州の店舗を閉店し、ルイ・ヴィトンは東京・銀座への大型店出店を白紙に戻した。イタリアの高級ブランド「ヴェルサーチ」は国内全4店舗を閉店し、日本法人の広報部門の閉鎖も決まった。事実上の日本撤退と言えそうだ。

日本の08年売上高は前年の半分

   「ヴェルサーチ」の日本法人、ヴェルサーチ・ジャパンは2009年5月に東京・紀尾井町の本店を閉店し、7月までに百貨店内の店舗2店とアウトレット1店もなくした。これで国内直営店全4店舗が姿を消した。また10月31日をもって、ヴェルサーチ・ジャパンの広報部門を閉鎖することも決まっている。

   ヴェルサーチは1978年にイタリアで設立され、アルマーニやフェレと並んで一世を風靡した。派手な色合いが多かったことから、日本ではバブルの象徴とも言われた。ところが1997年にデザイナーのジャンニ・ヴェルサーチが亡くなってから売れ行きが低迷し、巨額赤字に転落。日本でも正規価格での販売店は3店舗にまで減り、特にリーマンショック以降は派手系の服がめっきり売れなくなった。ヴェルサーチ・ジャパンの2008年12月決算の売上高は16億円で、前年の30億円に比べて半減している(帝国データバンク調べ)。

   ヴェルサーチ・ジャパンの広報担当者は店舗の閉鎖について、

「本国の方針ですので、現段階で公式にコメントできることはありません」

との回答にとどめた。

ルイ・ヴィトングループの売上高も20%減

   ただ、事情をよく知る関係者は、こんな見方をする。

「2010年秋以降にヴェルサーチは日本で新店舗を出す計画もあり、一旦クローズという方が正しいかもしれません」

   本店を移転する計画だったが、そこへリーマンショックの打撃を受けて移転が難しくなった。バブル期の名残がある本店で営業を続けるよりも、一度クローズするほうがよいと方針を転換したのでは、と前出の関係者はいっている。

   しかしヴェルサーチは08年に中国に10店舗も出店している。売れない日本に見切りをつけたとも言えそうだ。

   日本での高級ブランドの売れ行きは依然厳しく、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールを傘下に持つ高級ブランド最大手の仏モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)は、09年1〜6月期の日本での売上高(円ベース)が前年同期比20%減少した。アメリカの13%減、ヨーロッパの5%減よりも減少幅が大きい。一方、日本を除くアジアでは4%増加した。

   仏の宝飾ブランド「カルティエ」を傘下に持つスイスのリシュモンは、09年4〜8月期の日本の売上高(ユーロ)が7%減だった。

   矢野経済研究所によると、08年の海外高級ブランドの日本市場は1兆643億2600万円(小売金額ベース)で、前年比89.8%の大幅なマイナスを記録した。同社は「09年の高級ブランド市場規模はさらに縮小し、1兆円の大台を割り込むだろう」と予測している。

   かつて「ドル箱」と呼ばれていた日本市場だが、中国やインドなど新興国に鞍替えするブランドが今後も出てきそうだ。

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