少し前まではマイホームの王道だった注文住宅ですが、日本の建築現場はかつてない大混乱に直面しています。中東情勢の緊迫化に伴う原料高騰や資材不足が、家を建てたい施主だけでなく、工務店や職人をも追い詰めているのです。
今回は、建築士・ホームインスペクターである、さくら事務所取締役の田村啓さんが、住宅建築の現場で今まさに起きている異常事態の実態と、この危機を乗り越えるための具体的な選択肢を分かりやすく解説します。

■ 1. 建てながら発注する中小工務店を直撃する「ナフサショック」
中東情勢の混乱を受け、プラスチックや塗料、接着剤などの原料となる「ナフサ」の供給不足と価格高騰が深刻化しています。ここで大きな直撃を受けているのが、地域に根差した中小の工務店です。
・「3:4:3」の支払いルールが裏目に 一般的に注文住宅では、着工時・中間時・引き渡し時に費用を分けて支払います。資金力が潤沢ではない中小工務店は、この入金に合わせてその都度資材を発注するため、今回のような突発的な資材不足が起きると倉庫にストックがなく、一気に現場が止まってしまいます。
・納期回答が「2ヶ月以上先」の異常事態 実際に現場では、ユニットバスや断熱材の発注をかけても「納期は2ヶ月以上先」という回答しか返ってこないケースが相次いでおり、次の工程に進めない状況が続いています。

■ 2. 施主の金利負担増と、日当制の職人が抱える死活問題
現場が数ヶ月単位でストップすることは、お金と実生活の両面で大きなダメージをもたらします。
・施主を襲う「つなぎ融資」の罠 家が建たない期間が長引けば、引越しが延びるだけでなく、土地を先行購入している場合の「つなぎ融資」の金利を余分に支払い続けなければならなくなり、予算が大きく削られます。
・大工・職人の収入が途絶える危機 多くの職人は「1日動いていくら」という日当制で働いています。現場が止まれば収入が完全に途絶えるため、生活のために大手の動いている現場などへ移らざるを得ません。工務店にとっては、いざ資材が入って現場を再開しようとしたときに「信頼していた職人が戻ってこない」という、今後の経営を揺るがす致命的なリスクに繋がっています。
なお、大量発注と先行ストックができる大手ハウスメーカーは当面持ちこたえそうですが、問屋がパンク状態に陥っており、先々の見通しは不透明です。建築費の総額は少なくとも「1割(3000万円の家なら300万円程度)」、場合によってはそれ以上上昇し、情勢が落ち着いても元の水準には戻らないと見ておく必要があります。

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