元フランス代表のビカシュ・ドラソーがW杯開催中に撮影した“映像日誌”、「サブスティテュート」がフランスで14日から公開されている。作品は、友人で映像作家のフレッド・プレのアイディアに基づき、ドラソーが自分自身を中心に撮影した「プライベートな」内容で、W杯に出場する喜びと、その後になめた“補欠”としての辛酸を語るようすが記録されている。プレとドラソーの共作という形になった。

 パリの無料情報誌「ア・ヌ・パナム」の今週号にドラソーのインタビューが掲載されている。

 ドラソーはW杯直前の調整試合のメキシコ戦で、ジダンに代わって後半から出場した際、スタッド・ド・フランス(パリ郊外サン・ドニ市)の観客からブーイングを受けた。「僕のことを好きな人もいれば、そうでない人もいる」と気分を害すことはなかったが、少し気持ちが揺らいだのは確かだという。

 ドメネク監督はこの観客の反応に影響を受けて、W杯本番で彼をほとんど使わなくなったのだろうか。この質問にドラソーは「なぜ急に出られなくなったのか、あれこれ自分でも考えた。その前までは、ほとんど全試合に出ていたからね。理解しようと努めたが、結局わからずじまいだった。今となっては、それを知ることに興味はない。僕のW杯が失敗に終わったことは変わらないから」と答える。ドメネク監督に対する恨みはないが、代表でプレーを続ける意欲は失ったという。

 W杯の期間は、練習や試合が終わると、ホテルの自室にこもって撮影していたため、チームから「孤立している」と指摘されていた。インタビュアーが「ティエリ・アンリと一緒にプレステでもやっていたほうがよかったんじゃない?」と話を向けると、「プレステは一度もやったことがない。各自が好きなことをやればいいし、僕の場合は部屋にいてやりたいことをやっていただけ。大事なのは練習で必死に頑張ること。人間関係ではいいW杯を過ごせたよ。僕が孤立して、撮影のことばかり考えていたなんて、誰にも言えないだろう」と真面目に答えた。

「サッカー界のインテリ」と言われることに対して、「うんざりしているわけではないが、僕はインテリなんかじゃないよ。インテリに対しても、サッカー選手に対しても失礼だよ。読書をして、オペラを観に行く選手はほかにもいる」と話す。メディアがいろいろな選手像をつくりだしているだけ、と客観的だ。

 パリ・サンジェルマン(PSG)を離れたことでホッとしたか、という質問には、「僕が離れたんじゃなく、向こうがクビにしたんだ」と笑う。まだ他のチームと契約を結べていないことについては、「いつかはわからないが、またプレーすることになるのは確かだし、そうしたい。簡単ではないが、うまく行くだろう。幸いにして、僕を欲しがってくれるチームはまだある」と明言は避けたが、代理人へのコンタクトがあることをほのめかした。33歳という年齢だが、「まだあと少しはプレーできると思う。そう信じなければいけない」と意欲は十分だ。

 映画監督に転身? という問いには、「なってはみたいけど、その力がない」と謙遜する。「僕はただ映像を記録しただけ。それが意味をもったことに満足している」と語った。