ブラジルで行われた賭博の合法化と、オンラインギャンブル、いわゆる「iGaming」の制度化により病的なギャンブル依存が深刻化し、高金利なカードローンや闇金、リボ払いといった問題を巻き込んだ社会問題になっていると、海外メディアのBloombergが報じました。

Brazil Welfare Checks Help Fuel Gambling Spree, Government Intervention - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/features/2024-11-13/brazil-welfare-checks-help-fuel-gambling-spree-government-intervention

伝えられるところによると、3人に1人が貧困線以下の生活を送っているブラジルでは、街頭から公共交通機関の中まで至る所にギャンブルの広告があふれかえり、ソーシャルメディアではインフルエンサーたちが口々にギャンブルでもうけたと宣伝しているとのこと。

合法化によって一気に身近なものになったギャンブルは、貧しい暮らしにあえいでいるブラジル人の目に魅力的に映り、地元のサッカーチームに賭けたり、バーチャルカジノで遊んだりして一攫千金を手にしたいという欲望を加速させます。

Bloombergの取材に応じたベアトリス・アゼベド・ドス・サントスさんも、ギャンブル依存に苦しむブラジル人の1人です。



記事作成時点で19歳のドス・サントスさんがギャンブルにのめり込むようになったのは、17歳の時に「Crash」という仮想カジノゲームに手を出したのがきっかけとのこと。

自転車でピザやハンバーガーを配達し、週に500レアル(約1万3500円)を稼いで生計を立てていたドス・サントスさんは、ビギナーズラックで大金を手にしてしまい、すぐにとても返せないような借金をしてしまうほどオンラインギャンブルにのめり込んでしまいました。

「ゲームを支配しているのは私で、勝負は私次第だと、その時は思っていました」とドス・サントスさんは話します。

ブラジルでは長年にわたり、ドス・サントスさんのようなギャンブル好きは合法の宝くじで我慢したり、地下のビンゴホールでこっそり賭け事に興じたりしていましたが、ブラジルは2018年にギャンブルを合法化しました。

さらに、ブラジル政府は2023年に、スポーツやeスポーツなどのオンラインゲームに関連した固定オッズ賭博、つまりあらかじめ倍率が決まっている賭博の合法化を含む法制度を導入しました。



この新規制は、ギャンブル業者がブラジル財務省から認可を受ける際の手数料や、ベッティング事業の収益に対する課税などを定めたもので、制度の明確化や税収増を見込んで行われたものでした。しかし、予想外に多くのギャンブル業者が参入してオンライン賭博市場が急拡大したことなどにより、期せずしてギャンブル問題の過熱を招いたと指摘されています。

調査会社のInstituto Locomotivaによると、ブラジルのギャンブラーの数は2024年初頭からの半年で倍増し5200万人に達したとのこと。またブラジル中央銀行は、2024年8月までのブラジル国民のギャンブル支出は月180億レアル〜210億レアル(約4860億円〜約5675億円)と推計しています。

この問題に拍車をかけているのが、ブラジルの高い金利です。ブラジルはローンや借金の利息が高いことで有名で、大手の金融機関でも年利300%、小規模な銀行ともなると年利1000%に達することもあります。年利が1000%ということは、1年後には借金が11倍に膨れ上がっているということです。

ブラジル中央銀行は2024年1月に、前年の11月におけるリボルビングクレジット金利、つまりカードの請求額の一部しか支払われなかった場合に請求額に課される利息が434.4%に達したと発表しました。

中央銀行はまた、2024年9月に「低所得者向け福祉プログラム『ボルサ・ファミリア』で政府が8月に支給した資金の20%がオンラインギャンブルにつぎ込まれた」と報告し、この数字はブラジル社会に衝撃を与えました。



こうした事態を受け、ブラジル政府はギャンブル業者の認可を厳しくしたり、賭け金を制限したりする規制強化を打ち出しました。また、ギャンブルにクレジットカードを使用することを禁止したり、ギャンブル業者が賭け事を投資と言い換えて宣伝するのを禁止したりすることも検討しています。

ドス・サントスさんはBloombergに、ギャンブルにのめり込むのがいかに愚かなことだったかや、ギャンブルは貧困から抜け出す手段だと信じ込まされていたことなどを語った上で、「ソーシャルメディアではインフルエンサーが賭けではなく投資だと言っていましたが、今の私はそれがただの夢物語だと知っています」と話しました。