「死ぬかやるかだ」少年院を仮退院すると職場に電話、「殺すぞ」と脅され犯罪組織の「使い捨ての駒」に
首都圏を中心に「闇バイト」による強盗事件が相次ぐ中、新潟市中央区で今年6月に発生した強盗未遂事件に闇バイトとして関与した男(20)が有罪判決を受けた。
新潟地裁での公判で明らかになったのは、犯行の全容を知らされないまま、犯罪組織の使い捨ての駒となった若者の姿だった。(青木隆倫)
金に困り応募
「指示役から脅され、断れなかった。『殺すぞ』『死ぬかやるかだ』と言われていた」。男は被告人質問でそう漏らした。
裁判資料などによると、男は生活資金や借金の返済に困り、SNSを通じて、県内で強盗を行えば多額の金が借り入れられるという条件の闇バイトに応募。6月9日頃から秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を用いて、指示役と連絡を取るようになった。
男は指示を受け、犯行に用いる服やバッグを用意。同月19日、レンタカーで名古屋市内から新潟市内へ移動した。男は当初「運転をする仕事」と聞いていたが、新潟市に到着してから強盗の実行役と聞かされたという。
その後、黒色の衣装を身に着けて、指示役から言われるまま同市中央区の買い取り専門店へ。店長に包丁を突きつけ「金出せ」などと脅したが、現金はないと告げられると断念し、店から立ち去った。
特殊詐欺も関与
男は以前、今回の強盗未遂事件と同様にインターネット上での募集に応じ、特殊詐欺事件に関与したこともあった。だます相手から直接現金を受け取る「受け子」や、詐取金をATM(現金自動預け払い機)から引き出す「出し子」の役割を果たしたという。
今年2月頃に少年院を仮退院したが、犯罪組織に関係を断ちたいと伝えると、職場や会社の取引先にまで迷惑電話がかかってくるようになった。
今回の強盗未遂事件への関与を断れなかったのは、「以前のように変な電話やクレームがかかってくると嫌だと思った」からだといい、公判では反省の態度も示した。
新潟地裁で10月28日に行われた判決公判で、塚本友樹裁判官は懲役3年、保護観察付き執行猶予5年の判決を下した。男の関与は「従属的な立場にとどまる」としたが、「規範意識の低下が強くうかがわれる」と厳しい言葉を投げかけた。
不審電話強盗下見か 南区で相次ぐ
新潟県警は「闇バイト」が絡む強盗事件の続発について、「同様の事件が県内でいつ起こってもおかしくない」と警戒感を強める。
新潟南署によると、新潟市南区で今月6日、実在する住宅関連業者や金融機関をかたり、「リフォームの関係で間取りを教えてほしい」「保険請求の件で確認している。自宅に行く」と求める不審な電話が相次いだ。
首都圏の強盗事件の現場周辺では、リフォーム業者などを名乗る人物が事前に各戸を訪問していたケースもあり、不審電話は強盗の下見につなげる目的の可能性もあるという。
県警は、不審な電話には対応せず、家族構成やキャッシュカードの暗証番号、預金額は絶対に教えないよう注意喚起するとともに、不審者や不審な車両を見かけた際はすぐに110番するよう呼びかけている。