2024年9月19日、任天堂と株式会社ポケモンがパルワールドの開発元であるポケットペアを特許権侵害で訴えました。その後、2024年11月8日になって、ポケットペアは特許権侵害訴訟に関する現状を報告しており、具体的にどの特許を侵害したと任天堂が主張しているのかなどが明かされています。これに対して海外メディアや業界の著名人がさまざまな反応をしていたので、まとめてみました。

特許権侵害訴訟に関するご報告 | 株式会社ポケットペア

https://www.pocketpair.jp/news/20241108?lang=ja





2024年11月8日、ポケットペアは任天堂および株式会社ポケモンから以下の3件の特許を侵害したとして訴訟を提起されたことを明かしました。

・特許第7545191号(特許出願日:2024年7月30日、特許登録日:2024年8月27日)

・特許第7493117号(特許出願日:2024年2月26日、特許登録日:2024年5月22日)

・特許第7528390号(特許出願日:2024年3月5日、特許登録日:2024年7月26日)

特許第7545191号は「仮想空間におけるフィールド上で任意のキャラクターにアイテムを投げるギミック」に関する特許で、特許第7493117号は「キャラクターを捕獲するために捕獲アイテムを利用するギミック」に関する特許、特許第7528390号は「キャラクターが別キャラクターに搭乗して移動するギミック」に関する特許です。

ポケットペアは「本件については、今後の訴訟手続きを通じて、当社の見解を主張してまいります」とだけコメントしており、訴訟に関する方針や主張は行っていません。

フリーランスのイラストレーターであるInkfyさんは、「私は任天堂によるこの訴訟が失敗に終わることを望んでいます。その理由は、ポケモン以外のモンスターを捕獲する類のゲームで、今回争点となる特許と同じギミックが使われているためです。これらのギミックは広く一般化されており、訴訟が成功してしまえばこのジャンル全体に影響を及ぼすこととなるでしょう」と言及。





日本在住のゲーム配信者であるArexさんは、「1つ目の特許は仮想空間のフィールド上で任意の種類のキャラクター/クリーチャーに向けてアイテムを狙ったり投げたりして戦闘を開始するというものです。2つ目の特許はオープンエリアあるいはフィールド上でクリーチャーを捕獲することに関するものです。戦闘ではありません。3つ目はオープンワールドでクリーチャーに乗ったり他のクリーチャーに切り替えたりするメカニズムに関するものです」「これらの特許はすべてパルワールドがリリースされた後に出願されたものですが、これらは2021年あるいは2022年にすでに出願されていた特許を分割出願したもののようです」「任天堂側は差止め命令と損害賠償金(任天堂と株式会社ポケモンにそれぞれ500万円および遅延損害金)の支払いを求めていますが、任天堂に対する訴訟費用は恐らく支払うには莫大な金額となるでしょう。想像もつきません。結局、これは単なるいじめ戦術である可能性があります。訴訟費用を厳しく課すことでポケットペアを圧倒しようとしている?差止め命令に従えないようにする?ただし、これはあくまで私の個人的な意見であって、私は弁護士ではなく門外漢です」「結局、ソニーミュージック、アニプレックス、 ポケットペアによるジョイントベンチャーであるパルワールドエンタテインメントの設立が、任天堂および株式会社ポケモンが訴訟に踏み切る分岐点となったのではないかと思います。これは結局、任天堂とソニーの衝突なのでしょうか?企業間の戦争でしょうか?これは誰にもわかりません」と述べました。





ゲーム業界で働きながらYouTuberとして動画投稿も行っているDestinさんは、損害賠償金として任天堂と株式会社ポケモンに500万円ずつと、遅延損害金の支払いしか求められていない点に触れ、「大したことない金額」と指摘。





インターネットパーソナリティのDare Obasanjoさんも、「任天堂はパルワールドのリリース後に出願された特許に基づき500万円の支払いを求めて訴訟を提起しています。この訴訟で得られる金額よりも、弁護士費用の方がはるかにかかるに違いありません。何とも奇妙です」と、特許の出願日や損害賠償金額が低すぎる点を疑問視しています。

Threadsで見る




パルワールドが侵害したとされる特許がすべてパルワールドのリリース日以降に出願されたものである点に疑問を持つインターネットユーザーは少なくないですが、これについては弁護士のJustinさんが「いくつかの点について明確にしておきましょう。パルワールドが侵害したとされる特許は、パルワールドがリリースされる前の2021年12月22日に出願された特許の分割出願です。請求されている損害賠償金は重要ではなく、重要なのは差止め命令です。調査により、ポケットペアによる特許権侵害の証拠が見つかる可能性は高いです」と解説しています。





特許関連訴訟を専門に取り扱うMBHBのアンドリュー・ベルゼン氏は、2024年9月時点で「任天堂が著作権侵害ではなく特許権侵害で訴訟を起こしているという事実は、この訴訟に対する注目度をさらに高めています。任天堂が特許権侵害で訴訟を起こしているため、同社は著作権侵害訴訟をあきらめたのではないかと考える人もいるかと思いますが、任天堂のこれまでの訴訟履歴を踏まえれば、同社が著作権侵害訴訟を起こす可能性を完全に放棄したとは思えません。それでもパルワールドのキャラクターが外見的にポケモンに似ていると主張するのは難しいのではないかと思います」「現時点で重要な疑問は、任天堂が日本で起こした特許権侵害で訴訟をアメリカでも起こすかどうかだと思います。日本の特許権侵害訴訟の根底にある情報が不足しているため、これを判断するのは難しいです」「今回の訴訟は任天堂がパルワールドの脅威をいかに深刻に受け止めているかを示しています」とGamesIndustry.bizに寄稿しています。

一方で、ゲーム業界の訴訟問題などを取り扱うgames frayは、「任天堂とポケットペアの訴訟は、イノベーションの観点も含め、さまざまな理由で問題がある」と指摘。さらに、任天堂がポケットペアを訴えるために特許を分割出願した手法を批判し、「任天堂は特許の藪を作ろうとしています。任天堂がやりたいことは、パルワールドがパルワールドのままいられないようにすることです。モンスターを捕獲するというゲームメカニクスがそのまま残る限り、日本では任天堂のさまざまな特許が立ちはだかるはずです。今回の特許がだめでも別の特許が障害としてポケットペアの前に立ちはだかるはずです」と指摘しました。

games frayは技術革新がある場合、特許にゲームルールが含まれることは致命的ではないとしつつ、今回のように技術革新的な要素がないにもかかわらず特許としてまかり通ってしまえば、特許はゲームルールを独占するための手段と化してしまうと指摘。続けて、games frayは「任天堂と株式会社ポケモンには、自社の最高傑作を盗作から守る権利があります。しかし、ポケットペアに対する日本の特許権侵害訴訟で明らかになった事実は、盗作問題など存在せず、ただ大企業が特許を乱用しようとしているに過ぎないことを示唆しています」と指摘しました。

デジタルメディアのScreenRantは「パルワールドファンはポケットペアを支持している」とし、「パルワールドのオープンワールド要素やサバイバル要素、クラフト要素はポケモンにはない奥深さを持っている」と言及。さらに、ゲームの仕組みを特許とすることは、業界全体に影響を与える行為であり、「知的財産の保護とイノベーションの促進との間の葛藤を生み出す」と指摘しました。

経済紙のForbesは「パルワールドがPCとXboxで2500万本以上売れたゲームであることを考えると、(任天堂と株式会社ポケモンの合計)1000万円という損害賠償金はポケットマネー程度の金額です」「この訴訟は金銭を巻き上げるために起こされたものではなく、メッセージを送るための訴訟のように思われます。ただし、ポケットペアは訴訟費用に多額の金銭と時間を浪費せざるを得なくなります。任天堂がパテントトロールのように振る舞っていることは非常に不思議です」と述べ、任天堂の訴訟は金銭を目的としたものではないと指摘しました。