Photo: Miroslav Kotalík

今年頭にApple(アップル)がVision Proをリリースし、さらに画期づいた様子のXR業界。ヘッドセットはもちろん、各社はより手に取りやすいARグラスの開発にも力を入れているようです。

Metaには新作機のOrionがありますし、Appleもでは動き出しているようですし。大手以外でも着目しているところもあるでしょうが、なんとそのARグラスの波は個人にも。

開発者のMiroslav Kotalíkさんは、なんとゼロからARグラスを自作。いくら波が来ているとはいえ、決して容易ではないARグラス開発ですが、Kotalíkさんの自作ARグラスは大手と比べても、製作が安価でアプリ開発も簡単という利点も打ち出しています。

Kotalíkさん作「Zero」

Miroslav Kotalíkさんが自作したARグラス「Zero」。名前の由来は、Raspberry Pi Zeroで動くからでしょうか。外付けバッテリー含め別で接続するものは一切なしで、ウェブアプリを起動させることができます。

米Gizmodo編集部が、Kotalíkさんにメールで取材しました。自作しようと思ったのは、とある企業で実際に商業向けARグラスの開発を担当していた経験からでした。ARグラスの多くが、かけ心地がよくないことに不満をもっていたのだそう。

重さのバランスが気になりました。うまく顔にのらないし、機能するために有線でスマホと繋ぐというのも好きではありませんでした。だから、自分で作ろうと思ったんです。

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ARグラスに期待される機能の1つ、ガイド。歩きながらメガネ越しに地図(目的地への行き方)を表示したり、目にする文字を翻訳表示したりする機能。現在、超初期プロトタイプのZeroが目指すのもここ。

最初に試したのはArduino。その後、Webサイト読み込みやJavascriptの実行にはよりパワフルなものが必要と判断し、Raspberry Pi Zeroへ変更。

完成した初代試作機「Zero 1.0」は、レトロフューチャーなゴーグルのようなフレームが特徴です。レンズが丸いのもKotalíkさんのこだわりで、ヒンジ近くにパーツを配置しやすくするため。

Xにポストされた動画では、Zero越しに数字やアイコンが見えます。Kotalíkさんいわく、ウェブアプリはどれも使用できて、オフラインで使える仕様のものならネット接続も不要とのこと。

このやり方だと、とても簡単にARアプリが作れます。基本はWebページを作ればいいということなので。あとは、OSがセンサーと頭の動きと、目がどこを見たかを判断します。

レンズもDIY

Kotalíkさんの今回のDIYで着目すべきは、光学パーツ、レンズを自作したところです。Zeroは、レンズにプロジェクターでイメージを投影する仕組みですが、このレンズを手作りするのは簡単ではありません。光学系手作業(自作)は超難関。

使用したのはRay Optics Simulationという無料のオンラインツールと、DIYの強い味方3Dプリンターです。最初にトライしたのは、PETG製のレンズの3Dプリント。しかし、結果はレンズに気泡が入ってしまい、投影する画像に歪みがでてしまいました。そこで、レジン製のレンズに変更。3Dプリントした型にレジンを流し固め、それを的確な形まで手で研磨して整えました。

Zero 2.0へ

初代であるZero 1.0は、あくまでも「作ってみた」の試作品。しかし、安価でバッテリーパックも仰々しいプロセッサもなくてもARグラスはできるというデモに成功したと言っていいでしょう。

Kotalíkさんは、次なるモデルZ「Zero 2.0」に取り組む予定。いわく、2.0は大手ARグラスと肩を並べられるようになる想定だとか。

2.0の課題は、レンズを進化させ、視野を広げ、バッテリーも向上、レンズへの投影をよりよくすること。個人的によく使うアプリ(SpotifyやInstagramなど)の使い勝手を向上させること。また、手の動きをトラッキングできるカメラやマイクを搭載できる仕組みも検討中。使用する主パーツも、Organge Pi Zero 2wかRaspberry Pi Compute Module 4かで迷い中。つまり、やりたいことは盛りだくさん。

Zero 2.0の完成にはまだ時間がかかりそうだというKotalíkさん。完成したら、デベロッパーキットを250ドルから450ドル(およそ4万円から7万円)で販売する計画だそうです。

Source: Zero

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