これが「ポッキー」ではなくて「1」に見えてしまったら、相当の数論好きかも…「1だけが並ぶ数」の深すぎる世界

写真拡大

「素数シリーズ三部作」(『素数が奏でる物語』『素数はめぐる』『有限の中の無限』)でブルーバックスを代表する人気著者コンビ・西来路文朗さんと清水健一さん。最新刊『ガウスの黄金定理』も大好評のお二人が、新しい「数の世界」を案内してくださいます!

今回は、今日11月11日にちなんで、「1が並ぶ数」にまつわるお話です。

先月、じつに6年ぶりに最大の素数が見つかるという数学界を盛り上げるビッグニュースが飛び込んできました。これまで最大だった素数を1600万桁以上も上回る、なんと4102万4320桁の数字だというのですから驚きです。

そしてさらに、こんな巨大な数が素数かどうかを判定する方法と、「1が並ぶ数に深い関係があるというのですが、いったいどういうことなのでしょうか!?

ポッキー&プリッツの日

今日、「11月11日」には、たくさんの記念日の名前があります。

たとえば、ポッキー&プリッツの日。ポッキーとプリッツの形が、数字の「1」に似ていることが由来です。平成11年11月11日にスタートしたそうです。

これにちなんで、今回は「1」が並ぶ話をしましょう。

11月11日には、「レピュニット数の日」という名前もあります。レピュニット数とはどんな数でしょうか。

1, 11, 111, 1111, …

のように、すべての桁が1である数をレピュニット数といいます。「repeated unit(繰り返される単位=1)」がその名の由来となっていて、1964年にアルバート・ベイラーが著書『数論におけるレクリエーション』の中で名づけました。

桁数が偶数のレピュニット数は11で割り切れます。たとえば、

1111=1100+11

となります。右辺がいずれも11の倍数となっています。

111111=110000+1100+11

となり、これも右辺がいずれも11の倍数です。

3の倍数のレピュニット数

同様に、桁数が3の倍数のレピュニット数は111で割り切れます。たとえば、

111111=111000+111

となります。右辺がいずれも111の倍数です。

一般に、桁数がdの倍数のレピュニット数はd桁のレピュニット数で割り切れます。特に、桁数が合成数のレピュニット数は合成数になります。

では、桁数が素数のレピュニット数は、素数なのでしょうか?

たった6個しか見つかっていない素数

残念ながら、桁数が素数のレピュニット数は、必ずしも素数とは限りません。

たとえば、3桁のレピュニット数111は

111=3×37

と素因数分解され、素数ではありません。

素数であるレピュニット数をレピュニット素数といいます。現在確認されているレピュニット素数は、桁数が

2, 19, 23, 317, 1031, 49081

の場合の6個です。

2進法のレピュニット数

さて、0と1を用いて、2増えるごとに位が上がる表し方を2進法といいます。10進法の

1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, …

を2進法で表すと、

1, 10, 11, 100, 101, 110, 111, 1000, …

となります。

では、2進法のレピュニット数、つまり2進法で

1, 11, 111, 1111, …

と表される数はどのような数でしょうか?

メルセンヌ数とはなにか

2進法で

1, 11, 111, 1111, …

と表される数に1を足すと、

10, 100, 1000, 10000, …

となります。これらの数を10進法で表すと、

2, 4, 8, 16, …

です。よって、2進法で

1, 11, 111, 1111, …

と表される数は、10進法で

2−1, 4−1, 8−1, 16−1, …

であり、

2ⁿ−1 (n=1, 2, 3, …)

と表されます。このような数はメルセンヌ数とよばれています。

メルセンヌ数でも成り立つ性質

メルセンヌ数2ⁿ−1を2進法で表すと、

111… 11 (n桁)

になります。

桁数がdの倍数のレピュニット数は、d桁のレピュニット数で割り切れました。この性質は2進法のレピュニット数,つまりメルセンヌ数でも成り立ちます。

偶数桁の2進法のレピュニット数は、2進法の11で割り切れます。また、桁数が3の倍数の2進法のレピュニット数は、2進法の111で割り切れます。

これらは、nが偶数のメルセンヌ数2ⁿ−1が2²−1=3で割り切れ、nが3の倍数のメルセンヌ数2ⁿ−1が2³−1=7で割り切れることに相当します。

したがって、nがdの倍数であるとき、メルセンヌ数2ⁿ−1はメルセンヌ数2ᵈ−1で割り切れます。特に、nが合成数のメルセンヌ数2ⁿ−1は合成数になることがわかります。

メルセンヌ数と素数の関係

nが素数のメルセンヌ数2ⁿ−1が素数か、というとそうではありません。

たとえば、nが11のメルセンヌ数は

2¹¹−1=2047=23×89

と因数分解し、素数ではありません。

しかし一方で、メルセンヌ数2ⁿ−1が素数ならば、nは素数です。そして、nが素数pの場合を考えていくと、「1が並ぶ数」にまつわるさらに奥深い世界が姿を現します。

6年ぶりに発見された最大の素数に関する話も登場します。

この記事の執筆者・西来路さんと清水さんによる最新刊はこちら!

ガウスの黄金定理 平方剰余の相互法則で語る数論の世界

オイラーが発見し、ルジャンドルが証明に挑み、ガウスが証明した「平方剰余の相互法則」は、何がどうすごいのか? 予備知識ゼロから理解できる!

西来路さんと清水さんの好評既刊「素数シリーズ」

じつに6年ぶりの大発見!…なんと「桁数が4102万4320」の素数を叩き出した「1」の魔法