スポニチ

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　将棋の西山朋佳女流3冠（29）が8日、大阪・関西将棋会館で棋士編入試験の第3局に臨み、上野裕寿四段（21）に109手で敗れた。秘策の四間飛車が通じず、5番勝負で行われる試験は1勝2敗。プロを表す四段昇段を目指すシリーズは、カド番へ追い込まれた。

　「第2局が終わった後、四間飛車をやりたいと思って準備した。その期間は充実していたかなと思う」

　先手は上野で戦型は西山の四間飛車へ進んだ。振り飛車党の西山だが、四間飛車は珍しく今年度3局目。昨年度は1局しか指していない秘策だった。女流タイトル戦に一般棋戦も指す多忙の中、10月2日の第2局に敗れ、1勝1敗のタイとなった後から準備を始めたと明かした。

　「正直予想していなくて、意表を突かれました」

　昨年10月、プロとなる四段に昇段し、同月31日の新人王戦で棋戦初優勝した上野。そして先月の加古川青流戦で、デビュー1年余りで2度目の棋戦優勝もかなえ、藤井聡太王将（22）＝7冠＝を超えるスピード記録となった新鋭も想定外だったと終局後認めた。

　その後、32手目に向かい飛車へ振り直し、両者の飛車が2筋で対面した。上野は銀冠、西山は金矢倉に王を囲い、昼食休憩明け、上野が4筋の歩を突いて開戦した。

　中盤まで「悪くないのかな」と手応えを感じていた西山だったが、中段へ繰り出した角を上野飛車と交換され、形勢不利を自覚し始めたという。79手目、上野角の利きから逃れ、1筋へ退避した飛車を上野からの2筋への打ち歩で端に押し込められ、非勢を自覚した。

　ただ、その直前までは形勢互角。「中盤で抑え込まれ、苦しいと感じた。西山さんの強さ」。上野が印象を語った。公式戦はこれまでなかったが、西山が2016年度から5年間在籍した三段リーグでは1度敗れていた。

　「本局負けてしまったけれど、新しいことを試して充実感があった。次回も課題を持って臨めたら」。新四段5人を棋士番号順に選出する試験官5人中、最強とみられた上野に敗れたとはいえ接戦に持ち込んだ。残る試験官2人は宮嶋健太四段（25）、柵木幹太四段（26）。次回宮嶋との対局は17日、開館記念式典が行われ、大阪府高槻市へ移転する新会館で行われる。