中日OB・川上憲伸が語るCSがなかった時代の舞台裏
中日ドラゴンズOBで野球解説者の川上憲伸さんが、11月2日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』に出演しました。現役時代、クライマックスシリーズがなかった時の選手の気持ち、若狭敬アナウンサーが尋ねます。
日本シリーズの特別な雰囲気
川上さんはプロ2年目の1999年、さらにはあの落合ドラゴンズ黄金期2004年、2006年、2007年と日本シリーズを経験しています。
川上「周りの雰囲気が違う。黒い背広を着たメディアの方や関係者だったり、見たことのない女子アナが増えて来るんです(笑)」
急にテレビのキー局の人が福岡と名古屋にやって来ます。オールスターの勝敗度外視のお祭りとは違うピリピリ感もありつつ華やかさも感じるそうです。
ちなみにオールスターはメディアの人はスーツではなく半袖で、ゆるい雰囲気だそうです。
川上「女子アナも、どっちが主役やねん?みたいなひらひらしたのを着て聞いてくるでしょ?でも日本シリーズは近寄ってこない」
取材陣も遠目でビシッとした姿勢でいるそうです。嫌な冷たい空気の中にさらに冷気が漂っている感じなんだとか。
川上「選手全員が凄い気合入ってるし、そらこうなるだろっていうすごい緊張感ですよ」
CSがないシーズン
クライマックスシリーズがセ・パ両リーグで正式に導入されたのが2007年から。クライマックスシリーズ導入前はリーグ優勝したチームがそのまま日本シリーズへ進出する方式でした。
川上さんはクライマックスシリーズがない日本シリーズと、ある日本シリーズの両方を経験しています。クライマックスシリーズある、なしでシーズン中の気持ちを聞きました?
まずはクライマックスシリーズがないシーズン。
川上「日本シリーズに行くためのシーズンの戦いをずーっとやっていくから1位になれば後ろしか見ないわけですよ」
特にシーズン終盤、残り30試合ぐらいは、この試合を勝てば日本シリーズに行けると必死だったとか。
首位の緊張感
首位に立つと後ろが詰まってくる緊張感がすごかったそうです。こんなエピソードが。
川上「山本昌さんが僕が投げる前の先発で良いピッチングをした時に、思わず電話しちゃいましたもん。もちろんナイスピッチングだけど、ありがとうございます。なんか凄く力が湧いてきましたって」
若狭「いい話ですねえ。9月の優勝争いのピリピリ感、ヒリヒリ感を感じます」
川上「400メートルリレーのバトンパスと一緒で『1位で来い。でもバトンもちゃんと渡して』みたいな感じの雰囲気」
若狭「いい例えですねえ。川上さんがアンカーだったとして、第三走の山本昌さんがガーッとバトンを渡したわけだ」
川上「100メートルしかないから呼吸もできない合間に終わっちゃうでしょ」
CSがあるシーズン
クライマックスシリーズがないペナントレース終盤を400メートルリレーに例えた川上さん。2007年はクライマックスシリーズを経験してます。
川上「1600メートルリレーの障害物ありの、一走目が何かあったとしても、まあ一応リードはしといて、みたいな感じがある」
若狭「アンカー四走の川上さんも頑張るは頑張るけども」
川上「ハードル飛ぶときに、足が当たって万が一池でボチャッと滑ったとしても、ひょっとしたらイケるんちゃうとか?そんな感じがあった」
3位までなら優勝の可能性があるというクライマックスシリーズと、クライマックスシリーズがなかったシーズンでは、気持ちに違いがありました。
非番投手が伝令役
話はもう一度、クライマックスシリーズがなかった当時の話へ。クライマックスシリーズがなかった時の、川上さんの緊張感あふれるエピソードです。
川上「残り10試合とかだったらもうピリピリ。僕が試合で投げない時、裏で仲介人だったもんね」
昔はスマホもありませんでした。テレビ中継を見て、いちいちそれを伝えに行っていたそうです。例えば巨人と阪神戦。
こちらはナゴヤドームでヤクルトとドラゴンズ。向こうの試合が動くと。
川上「こっそりブルペン行って『今、巨人が3-1で負けてるって出てますよ』『わかった、憲伸ありがとう』ってそんなんでした。面白かった」
すぐにはわからない
防御率争いもすぐにはわからないので、次の日の新聞待ちだったそうです。
川上「僕が良いピッチングしたら徹夜だったもんね。ひょっとしたら上原追い越してるんちゃう?とかって」
若狭「追い越してるじゃ〜ん」
川上「追い越してないじゃ〜ん、とか(笑)」
良いか悪いかは別として、クライマックスシリーズが導入されてから、シーズン終盤の戦い方が如何に変わったか、わかりやすい川上憲伸さんの話でした。
(尾関)