中日・小笠原慎之介がポスティング容認を公表 時間をかけて雰囲気を醸成した賜物
貴重な左腕はどの球団に新天地を求めるだろうか(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
中日・小笠原慎之介が10月22日、ポスティングシステムによる今オフのMLB移籍を球団に容認してもらったと明かした。球団側もその事実を認めた。
球団でポスティングシステムを利用するのは2003年の大塚晶則以来、21年ぶり2人目のレアケース。実力派サウスポーがいよいよ海外移籍の扉を開ける。
【関連記事】中日のドラフト「理想の指名」は? 1位は絶対に投手、2位もできれば
■剛速球投手から「制球力の高い左腕」へ
小笠原といえば、MLBをはじめとする米国文化に造詣が深く、ここ数年はオフに入るたびに渡米。最先端のトレーニングや本場のベースボールを肌で体感してきた。同時にポスティングによるMLB移籍希望を訴え、球団と継続的に話し合いを実施。今回の容認公表は大願成就への一歩目を踏み出したと言って良い。
思えば、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。
甲子園優勝投手の実績を引っ提げ、ドラフト1位でプロ入り。150キロ前後の剛速球を武器に、高卒1年目の5月に一軍デビューを果たし、3年目にはチーム最年少の開幕投手に抜てき。順風満帆な野球人生と思われたが、その後は左肩や左肘のケガが相次ぎ、一度は先発ローテの座からフェードアウト。わずか1勝に終わった2020年ごろは、全力で投げても直球のスピードが130キロ台にダウン。若くして技巧派への転向も視野に入るほどだった。
それでも地道なトレーニングとフォーム改造でかつての球威を取り戻し、2021年に自身初の規定投球回到達。今季までの4年間ずっと規定投球回の143回以上を投げ続けた。セ・リーグで4年連続規定投球回に到達したのは小笠原と戸郷翔征(巨人)のみ。いかにタフな投手か分かっていただけるだろうか。
今季は力任せに投げる場面を少なくし、ナックルカーブやチェンジアップを多投。与四球率が改善され、米国では「制球力の高い左腕」と紹介されているという。
■早ければ年内に新天地判明か
小笠原のMLB移籍希望は、ドラゴンズファンならばある程度認識していたと思うし、表立った反対意見も少なかったと見られる。それは彼が4年間ローテを支え続けてきたこと、オフの場面で三枚目キャラを演じて親しみを持たれていたことなど、時間をかけて「送り出してあげよう」という雰囲気がファンの中で醸成されていたからと推察する。
もちろんチーム内部への貢献も大きいからこそ、井上一樹新監督の理解を得られたのだろうし、球団幹部も「熱意が伝わった」とコメントを残したのだと思う。険しい道なのは間違いないが、持ち前のポジティブさや聡明さで米国生活をエンジョイしてもらいたい。
ちなみに今後の展開としては、11月1日〜12月15日の間に球団からポスティングシステムを申請。申請手続き後の交渉期間は45日間となっている。早ければ年内、遅くとも1月末には新天地が判明するのではないか。
[文:尾張はじめ]