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ドル/円急落により「円高トレンド」への転換をも予感させる現在、「米ドル円」に対する世の中の関心はかつてないほどに高まっています。そこで、今週の米ドル円相場の動向に影響を与えそうな「注目の経済指標」について、東京海上アセットマネジメントが解説します。

前週の米ドル/円の振り返り

為替市場では、パウエルFRB議⻑が⼤幅な利下げに慎重な姿勢を⽰したことや、⽇銀が公表した「9⽉開催の⾦融政策決定会合の主な意⾒」で利上げを急がない姿勢が⽰されたことや、⽯破⾸相が追加利上げに慎重な考えを⽰したことなどから、⽇⽶⾦利差を意識した円売り⽶ドル買いが優勢となり、10⽉11⽇には1⽶ドル=148.62円と10⽉4⽇(146.72円)に⽐べ、円安⽶ドル⾼となりました(図表1)。

[図表1]ドル円と⽇⽶⾦利差 出所:Bloomberg

IMM※の通貨先物における円のポジション(持ち高)をみると、ロング(買いポジション)が大幅に積み増されたことで、8月13日には2021年3月以来のネットロングに転じ、その後は増加傾向にあります(図表2)。
※ IMMとは、シカゴ・マーカンタイル取引所の国際通貨先物市場

[図表2]通貨先物における非商業部門(投機部門)の円先物ポジションの推移 出所:loomberg、シカゴ・マーカンタイル取引所

FRBが9月に利下げを開始したことに加え、植田日銀総裁が利上げに踏み切った7月以降も、利上げ継続姿勢を示唆したことが、日米金利差の縮小につながるとの見方から、中⻑期的に円高を予想する向きが増えつつあることを示していると考えられます。

もっとも、米経済が引き続き堅調さを維持すれば、FRBによる利下げ観測の後退とともに円ロングのポジションを解消する動きが広がる可能性があります。特に、FRBが追加利下げの必要性を判断をするうえで重要視している雇用統計などの経済指標が、今後為替市場に与える影響は大きくなることが予想されます。

今週の注目点は…

来週は、ECB理事会などに注⽬しています(図表3)。

[図表3]来週発表予定の主要経済指標 出所:Bloomberg

今会合では、9⽉に続き0.25%の利下げを実施することが予想されています。9⽉会合ではインフレ鈍化が継続するなか、ドイツなどに景気下振れの懸念もあり、⾦融引き締めの度合いを⼀段と緩めることが適切であるとして、0.25%の追加利下げに踏み切りました(図表4)。

[図表4]預⾦ファシリティ⾦利とHICP 出所:Bloomberg

その後、公表された経済データからはインフレ率がECBの想定を上回るペースで減速している可能性が⽰唆され、景気の腰折れ回避と中⻑期的な2%の物価安定⽬標を達成するためには、より早いペースでの利下げが必要になると考えられます。

最近では、仏中銀のビルロワドガロー総裁がインフレ率が⽬標の2%を下回るリスクが⾼まっているとして、17⽇の会合で利下げを実施する可能性が⾼いとの⾒⽅を⽰したほか、タカ派の代表格と⽬されるドイツ連銀のナーゲル総裁は、「来週のECB理事会で追加利下げを検討することに前向きだ」と発⾔しています。

複数のECB⾼官がハト派寄りにシフトするなか、今会合ではラガルドECB総裁の発⾔にも注⽬が集まることが予想されます。9⽉会合後の記者会⾒では、ラガルドECB総裁は今後の利下げ時期やペースについて明⾔を避けているだけに、今会合で踏み込んだ⾔及があるが注⽬されます。

[参考図表]参考:短期⾦利市場が織り込む政策⾦利⾒通し 出所:Bloomberg

東京海上アセットマネジメント

※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが注目…10月第3週の為替相場にインパクトを与える「重要な経済指標」』を参照)。